株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 連載・ゴルフ場セミナー誌 1999年9月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第1回)

欧州ゴルフコースの平均値  
 考えて見ればトム・モリス(1821〜
1908)はプレーヤーとしてだけではなくグリーンキーパーとしてもさらに設計家としても先駆者だった。
セント・アンドリュースを反時計廻りにし18ホールとしたのも、コース保全のため日曜休日としたのも彼だった。
彼の口癖は『グリーンにもっと砂をいれろ』だったという。
 そんな彼の名前を頂いた連載を始めるにあったて、英国だけでなく欧州全体
の現在のゴルフ環境をレポートするのも意味のある事だろう。
ゴルフビジネスが日本と随分異なった経済環境のもとに置かれている事を理解
しておかないと、連載が遠い国のおとぎ話になってしまうからだ。
 このレポートは英国ゴルフ場設計家協会の会員が欧州全域のゴルフ場を対象
に調査をしたものだが、私は自分の所属しているストーク・ポージスGC(C.H.
アリソンが初代支配人)の調査をした関係でここに報告できる訳だ。
この調査での回答数は、英国内19を含む70コース程なので、全体像を正確に反
映しているとは言い切れないが、国境を超えたEU圏のゴルフコースの概略を探
る手がかりにはなりそうだ。
 70コースのうち9コースが1985年以前の開場、以下86〜90年が19コース、91〜
95年が20コース、96〜98年が22コースなので比較的若いコースが多いようだが、
英国を除くEU内では適正な配分だろう。
 18ホールのゴルフコースを運営するスタッフは平均17名!(コース管理6.8名、
レストラン&プロショップ8.2名、事務他3.2名)、パートタイム5.8名(内コー
ス管理2.0名)、季節従業員5.9名(内コース管理3.3名)程である。日本の場合、
キャディーさんを含めると100人をゆうに超える大所帯だからその違いに愕然と
する。
 欧州の気候は概して夏場に雨が少なく乾燥し、冬場が暗くじめじめして寒い
というのが相場なので、日本と直接比較するのは無理があるが、
自動散水設備は1/3がグリーンとティーに、残りの2/3のクラブがフェアウエー
まで持っている。水源は地下水利用が50%、川や池の水を利用するが39%、
水道水が14%、冬場の雨水をためておいて夏場に使うが24%、農業用水を利用
が7%、再循環システムを持ち水資源のリサイクルを行うが6%となっている。
肥料はグリーンとティーはほぼ全てのクラブが使用するが、FWは9割、ラフは
3割程度のクラブしか施肥していない。
 農薬の年間の使用量は殺菌剤が52kg/a、徐草剤が60kg/a、殺虫剤が36kg/a程
である。
(内訳は別表参照)
欧州ゴルフ場の農薬使用状況
殺菌剤 除草剤 殺虫剤
GR 88% 34% 64%
TEE 47% 52% 44%
FW 14% 71% 34%
R 0% 37% 6%

つまりまったく農薬を使用しないコースも1割以上ある訳だ。また半数以上の
クラブが管理スタッフに環境問題の公的講習を受けさせている。
 さて英国内のゴルフ場開発に限っていえば、用地確保やクラブハウス建設も
含めて平均4ミリオンポンド(1ポンド200円で換算すると8億円)程度で開発可
能である。 100億円以上かかる日本と比べるとコスト意識の徹底を余儀なくさ
れる訳だ。
 一方会員になる(つまりゴルファーと認められる)には、少なくとも推薦者
2名と入会金、年会費(平均で1000ポンド位、入会金はその2倍程度)が必要だ
が、その他にコミッティーとのインタビューやクラブプロとのテストラウンド
も必要な所が多いようだ。