新にゴルフコースを設計する場合、設計者が一番初めに検討するのは、クラブハウスの位置と、コースのルーティングである。スタート直後の数ホールが朝日に向かわないように、最後の数ホールが夕日に向かわないように考える。
日本ではアウトとイン両方からスタートする形式が一般的だから、少なくとも1番2番と10番11番は東向きのホールを
避け、同様に8番9番と17番18番は西向きには造らない。つまり、18ホール
中8ホールが東西の方向に対する制約を受けるのだ。クラブハウスへの導入経路は、
距離が短いほうが経済的だし、フェアウエーとは交差しないほうが良い。纏めると、
クラブハウスの位置は敷地の外周部付近で、しかも南北を含む東側が望ましい訳だ。
2番目に、18ホールを3ホール毎の6つのパートに分け、距離と基準打数の合計を
吟味し、地形や植生を勘案しながら、コースの骨格を検討するのが一般的だろう。
パーの並び方次第で、コース全体の雰囲気が男性的で雄大な構成になるか、女性的
で優美な構成になるか、概略が決まるのだ。
次に、ホール毎の目標難易度を考えるが、そのホールがラウンド全体から見て何番目のホールか、そこでどのような
ゲームが展開されるか、と想像しながらの作業である。最後に、池やバンカーといったハザード配置を決めてゆくのだが、グリーンの大きさや向き、傾斜の方向やガードバンカー等との取り合いも、とても大切な戦略性の一部である。
『良いホールは、グリーンの一寸した傾斜が、400ヤードも離れたティー
インググラウンドでのプレーに影響を及ぼすものだ。』
とA.マッケンジーも述べている。
このように考えてゆくと、グリーンはコースの中で単独で存在するものではなく、
周りと調和してこそ美しく映える物だと思う。
2.四種類のルーティングの説明
セント・アンドリュース
ゴルフが始まった15世紀ごろは、現在のオールドコースが海岸線に接しており、リンクスランドの幅も狭かったのだろう。原始的なゴルフではプレー人口も少なく、プレーヤーが交差する事も問題ではなかった。19世紀にトム・モリスが反時計回りにルートを変更しても、ダブルグリーンは変えなかった。
ゴーイングアウト・カミングインの最小解。
ツルーン
19世紀後半の開場なので、行って来いの古典的な構成を採りながら、フェアウエー
の共用はしていない。セント・アンドリュースに較べて約1.5倍の敷地幅が必要
だが、それに見合う格式があったという事だろう。
尚、設計者は所属プロやジェームス・ブレイド、A.マッケンジーやフランク・
ぺニックと時代ごとに改修している。
ミュアフィールド
世界最古の倶楽部組織が現在所有するコースは、リースリンクスから度々移動を
繰り返して、1891年にミュアフィールドに落ち着いた。
原設計はジグザグパターンだが、現在のルーティングはほぼ理想的なものである。
フロント9は時計回りでスライサーに易しく、バック9は逆になる。風も太陽の
影響も其々のホールで異なり、飽きさせない。
サニングデール
トーナメントが行われるオールドコースはウイリー・パークの設計で単純な
ルーティングだが、コルト氏が総支配人時代に設計したニューコースは現代に
連なる多面性を良く顕している。此処では多少強引な所も散見されるが、その後の
作品は実に調和が取れている。
3.レダンホールとゴールデン・ベル
ノース・バーウィックの十五番。通称レダンと呼ばれるパー3は、オーガスタ・ナショナルの12番と共に、今までに最も多く真似されたホールではないか、とよく言われる。
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