株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 Choice誌掲載 (13) 2007年1月号     出版元ゴルフダイジェスト社

世界の『地クラブ』を求めて

ご存知かもしれないが、工業製品の生産国表示(つまりメード・イン・○○)の基本概念は、『製品になるための最後の大幅な変更をした国』がその製品の原産国になるというものである。

つまりゴルフクラブの場合、台湾製のグリップとアメリカ製のシャフトと中国製のアイアンヘッドで構成されているしても、日本国内でクラブとして組み立てられていれば日本製と呼べるのだ。という事は、ゴルフがポピュラーなスポーツではない国や、生産設備が整っていない国、若しくは輸入製品に奢侈税のような高額の関税がかかる場合など、部品を海外から調達して自国内で最終組み立てをした方が、低コストで市場に適合した製品の訴求がしやすい。

今回、そういった観点からロシア国内での『地クラブ』を探したが、残念ながら今のところ存在しない事がわかった。その代わりモスクワ市内の老舗ゴルフショップで、レジェンドと銘打たれたオランダ製のクラブと、ロシアとグルジアの合弁会社が企画販売しているMGというクラブを見つけたので紹介しよう。どちらも初心者用の低価格セット販売でロシア製ではないのだが、クラブメインテナンス工房もロシア国内で一軒だけという状態なので、致し方ない事だろう。因みに現在ロシアには18ホールズのコースは一箇所だけ、9ホールズのコースを含めても片手で数えられるだけだが、ほぼ同緯度のスゥエーデン選手の活躍を考えると、今後に期待が持てる。

ロシアで唯一のクラブ職人アレクセイ。ゴルフ倶楽部内に工房を構えるが、クラブ組織とは独立した経営形態をとる。彼の前任者の師匠が、米国でクラブフィッティングを学び、数年前からアレクセイが工房を取り仕切っている。つまり、ロシア国内で唯一のクラブ工房を、一人で切り盛りしている訳だから、ロシアで唯一のクラブフィッティング職人。グリップやシャフトの交換依頼が多いそうだが、ライ角度の調整などもこなす。特に日本では殆ど行われないスコアリングラインの目立てが興味深かった。

12畳ほどの広さの工房内には、振動計を含む米国製(ゴルフスミス製だと思う)の機材が使いやすく配置してあったが、目を引いたのはロシア製の万力。工作機械業界で常識になっている話だが、世界最高の万力はロシア製(正確に言えば旧ソ連製)で、デザイン、材質、操作性、拡張性全てに秀でた逸品。

唯一の18ホールズゴルフ場メリディアンゴルフ倶楽部のプロ、スタスコフ。92年当時8人しか居なかったプロゴルファーは現在では30人を超え、欧州PGAに準じたプロ資格を持つ。

モスクワ市内の老舗ゴルフショップ
高級ブテックのような内装で、モスクワ中心部の高級住宅街にある。ロシア製の物はティーペグで作った国旗だけ!