株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 特集・ゴルフ場セミナー誌 (5)        出版元ゴルフダイジェスト社

レーザー光線をガイドに施工する
暗渠排水工事用機材の説明
 

 フェアウエーに水が溜まっていると、プレーヤーのコース評価が一挙に
下がってしまう。排水工事は雨が多い季節の前に済ませておくのが原則だから、
管理側から見れば梅雨をひかえた今が一番良い季節だろう。
欧州で行われている最新の機材を紹介しながら排水管敷設工事の潮流を
レポートしよう。

 排水に際して考えるべき基本は2つあり、1つ目はいったん暗渠排水に廻った
雨水は、特別な設備を用いない限り2度と水分として利用できない事を認識する
こと2つ目は排水する事が決まったら雨水を降った端からキャッチできるよ
に排水管を敷設する事である。
具体的には斜面に対して丁度スキーの斜滑降と同じような角度で排水管敷設
するのだが排水容量の計算などは後回しにしても掃除しやすい事を優先すべき
だと思う。

 フェアウエーの排水において有孔排水管の勾配は通常1/50から1/200に設定し、
流速を0.5m程度に留める事が多いようだが、それは排水管合流部における突撃
抵抗を抑えるためである。
この様な緩やかな勾配では、排水管の10mm程度の不陸も問題になり、最近では
径の違う配管に使うジョイント部分の段差さえ問題視されるようになってきた。
勾配が急な場所では流速が速くなり、排水管下部の地盤を浸食する。この事は
排水勾配を部分的に変化させる事になるので、凹んだ部分に比較的目の荒い砂を
堆積させる原因となる。
逆に勾配の緩い部分にはシルト分が堆積し易いが、それに因ってさらに勾配が
緩やかになり、シルトの堆積を助長するようになる施工当時にはわずかだった
不陸が急激に成長し、そこに砂とシルトが堆積し、遂には排水管を詰まらせる
ようになる訳だ。

 年1度の排水管内部の洗浄は不可欠だが、排水管敷設時に不陸を少なく
できれば泥の堆積するのを遅らせる事ができるので、このような工法が現実化
してきた訳だ。
暗渠排水敷設がゴルフ場で行われるようになった80年程前の工法は、直径1.5m
もある鉄製の円盤の外周部に歯を備えた機械を蒸気機関で廻していたらしいが、
現在の主流は巨大なのチェンソーとベルトコンベアーを一体化したような
アタッチメントをトラクターで牽引する物である。
 アッタチメントが上下に扇動し、掘削高さを調整するのだが、オペレーター
によって手動調整するよりも予めレーザー光線(直進性が強い)で勾配を決め、
それをガイドに施工するほうがずっと精度が高くなる。

 掘削土搬出用のトラックを並走させ有孔排水管を自動的に送り出すアタッチ
メントや砂を地表高さまで自動的に埋め戻すアタッチメントを同時に牽引する
施工例が欧州では多い。が、奇麗好きの日本のグリーンキーパーには、予め
一直線にターフカッターで施工場所の芝を剥がしておき、砂を埋め戻した後に
貼直す事を勧めたい。

 日本ではグリーンキーパーが補修工事として排水管敷設に取り組む場合、
バックホーで溝を掘りレベル調整をした後有孔管を敷設しいるのではない
だろうか?
これでは時間が掛かる事に加え、施工精度もばらつきが大きい。
此所で紹介した工法を使った場合、メーカーは充分な馬力をもったトラクターで
駆動すると毎秒0.5〜1mの速度で掘削できると主張しているが、現実的には毎秒
30cm位だろう。
それでも30mの排水管敷設が2分以内に終了するというのは驚くべき速度だと思う。
ただこの種の機材は直線的に排水管を敷設するには適しているが、カーブを切る
のが苦手である。もっとも故井上誠一さんの言う所の『酔っ払い型のハロー』
程度なら適応できるようだ。