株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 連載・ゴルフ場セミナー誌 1999年12月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第4回)

階級意識が色濃く残る英国スポーツ
 ゴルフシーズンもそろそろ終わり、代わってスヌーカーと呼ばれるビリヤードの1種がクラブハウスでプレーされる季節になった。
古いクラブには必ずボールルーム(スヌーカーをプレーするための部屋)があり冬の問メンバーは、ゴルフの代わりにスヌーカーのマッチにうち興じるのである。
ゴルフやスヌーカーに限らず、英国でのスポーツは未だに階級意識が色濃く
残っている。

ポロやクリケットやラグビーなどは、中、上流階級のスポーツ。サッカーや
ダーツなどは労働者階級のスポーツである肝心のゴルフはテニス同様あまり
はっきりしていないが、強いていえば中流以上のスポーツとして認識されて
いるようである。

 というのは、クラブ組織が色々ありペイ・アンド・プレー(日本でいう
パブリック)に始まり、家庭的な雰囲気の地元のローカルクラブ。社交的な
雰囲気の有名クラブ重厚で厳格な雰囲気の名門クラブまで、会員の階級に
あわせた選択肢があるからである。

また、毎年キャプテンが代わるのも特徴で創立70年のクラブには70人の
歴代キャプテンがおり、クラブルールやマナーについて会員の相談に気軽
応じてくれるほか会員の模範になるように行動するつまり歴史のあるクラブ
ほど風紀委員が多く、自然と会員のマナーも向上するわけだ。

 会員が支払う年会費の額がそのままメンテナンスの程度差に表れるのも
特徴で、会員やコミッティが常にコース管理における対費用効果をチエック
していることがわかる。
逆にいえば納得づくで管理費を削っているわけでそのことでコース管理者が
不当に責められたりはしない。

クラブプロについては、プレー技術が一定の水準に達しクオリファイされて
いることは当然であるがその他にライ角度やロフト調整などのクラブメンテ
ナンスプロショップの経営手法、レッスン方法などPGAが開催する講習を受け、
試験にパスして初めてヘッドプロになることができる。

日本と大きく違うのは、苦労し努力してクラブプロになったとして一も、
プロゴルファーは労働者階級なかでも肉体労働者として認識されていること
だろう。未だにプロやキャディはハウス内に入れない所が多く残っている。
人種や職業によって差別することはいけないことだが、クラブ組織内ではある
程度自由裁量が認められているのかもしれない。

 ところで先日、英国設計家協会の勉強旅行で米国ジョージア洲アトランタの
オーガスタナショナルGCを視察する機会があったメンテナンス費用の限られた
英国やヨーロッパと違い、ここでは少しでもよくなる可能性があることはすべて
ためしてみるといった姿勢があった。

特に12番パー3のグリーンと13番ティグラウンドでは松林が背後に迫り日照条件
が厳しいことから、夕方から真夜中にかけて人工照明を当てていた。
具体的にはグリーン上空3mの所にワイヤーを張ってキロワット級の傘つき
照明機具を20機程ならべ直下のグリーンを照らしさながらイカ釣りの漁火の
ようであつた。

らに、グリーンの床にはヒーターが埋め込まれ肋骨排水管利用の冷房システム
まで備えている。
コース管理スタッフは常時80人もいるが、機械化が進んでいるにもかかわらず、
みんなとても忙しそうに働いていることも感動的だった。