株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 連載・ゴルフ場セミナー誌 2000年4月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第8回)

雨の多い冬場のゴルフシューズ
 冬場に雨の多い欧州の場合排水設備の不備も手伝ってこの時期のゴルフが一番辛い。芝が薄くてダフりやすいし、そこら中ぬかるんで泥まみれになるからである。そこで活躍するのがニッカーポッカーや長靴スパイクシューズである。
 前者の長所は何といっても経済性にある。ゴルフの度にウールの長ズボンの
裾を泥だらけにしていると怖い女房殿に怒られる。恐妻家の多い英国紳士は、
長いソックスだけを洗濯に廻してニッカーボッカーをめったに洗濯しないで済
むように躾られてしまったのだ。余談だが、この長いソックスの伝統は夏場の
短パンと長いソックスの組み合わせにも表れている。この組み合せは、元々英
国陸軍がアフリカやインドに駐屯していた時に採用された服装で、軍隊として
の規律と暑さとの妥協点であったのだろう。それが本国に戻って流行になり、
避暑地ファッションとして定着したというのが一般説だ。
 もう一つの長靴スパイクシューズは近年ヨーロッパ大陸で流行ってきて、英
国に輸入されてきたものである。フランス製の物は長ズボンを中にたくし込む
タイプで、ヨットや釣りなどに使う膝下ブーツに鋲を打った物らしいが、ゴル
フシューズとしてのホールド感がすこし頼りない。ドイツ製の物はくるぶしま
である登山靴に鋲を打ったような物で、相変わらずズボンの裾が汚れてしまうが、
防水と暖かさは抜群。ニッカーボッカーにこのブーツを履いてゴルフをしてい
ると学生時代の山岳部を思い出してしまった。
 靴の続きはソフトスパイクの是非について新たな問題が提起された話題である。
最近の調査では、普通のスパイクシューズの鋲をソフトスパイクに換えたもの
は問題がないのだが、スニーカータイプのソフトスパイクで底に大きな凹凸が
ある場合、思いのほかグリーン面への損傷が大きいことが報告されている。
既にスパイクレスに移行したコースでは、自分のコースでは良い実績が上がって
いると主張しているが、内心穏やかではないはずだ。プレーヤーから見たスパ
イク規制のメリットはグリーン上で他人のスパイクマークにカリカリしなくて
すむだけなのだから、軽快でグリップ力に優るスニーカータイプに市場が移行
していくのは自然な事に思われる。
 考えて見れば、ゴルフコースに限らず歩き方はマナー以前の問題で個人の資
質の問題である。私個人の日本での経験では、お役所勤めの人とお医者さん、
それと内股の女性がグリーンに引っ掻き傷を作りやすい。彼等はスリッパやサ
ンダル履きで仕事をしており、履物を引きずって歩く習慣が身についているのだ。
 スパイク容認派の名門クラブの支配人は、『プロのトーナメントがスパイク
規制をするようになったら我々も考えます。スパイクマークが影響するような
シビアな条件で戦っている彼等が一番その必要性を感じているでしょうし、ス
タンスを安定させる技術も優れているはずだからです。現在、我々が抱えてい
る問題は全く別の次元です。スパイクレスの場合、家からゴルフシューズを履
いてきてプレーをし、そのままの靴でクラブハウス内を歩き廻り帰ってゆく事
も可能です。この事は色々の場所からの雑菌をコースに持ち込むことになりま
すし、逆のこともあるでしょう。またクラブハウス内の汚れも問題になってき
ました。以前スパイク禁止と表示していたダイニングルームをゴルフシューズ
禁止に改めなければならなくなりました』と語っていた。