株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
ホーム
プロフィール
掲載原稿・講演会
週刊コラム
出版物
連絡先
トップページ
 連載・ゴルフ場セミナー誌 2000年7月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第11回)

連載1年目の決算報告
 今回で連載も1年になった。
この機会に英国やヨーロッパ諸国と日本のゴルフ環境の違いを更めて考えてみたい。
 英国内のゴルフ場は、ほぼ日本と同じ2500箇所程度ある。 新規開発は年50コース程で頭打ちだが、好景気を反映してか改修工事が多い。
土地代を含めた開発予算は8億円程度で、その内コース造成費は芝の種や散水
設備も含めて2億円弱である。
会員数は18ホールあたり600名から800名程で、個人会員が大半である。法人会
員も近年増えてきたが、彼等には倶楽部競技への参加資格はなく、したがって
ハンデキャップも取得不能な場合が多い。
つまり公私の区別をはっきりするという意味と、クラブ競技の成績しかハンデ
キャップの対象にしないという硬派の倶楽部が多く存在する。
言い替えれば、プレーヤー個人のハンデキャップが必要ならば、個人の資格で
ゴルフ倶楽部の会員になりクラブ競技に参加して、倶楽部メンバーとして恥ず
かしくないと認められて、初めてハンデキャップを貰えるという訳だ。
 会員券が市場で売買されることはなく、倶楽部に入会できるかどうかは、
2名の紹介者と面接試験の結果如何による。運良く欠員があれば数か月、もし
他にも入会希望者がいて順番待ちならば数年かかることもよくある。
入会金は60万円、年会費が30万円程で、日本に較べて年会費の割合がとても大
きい。
 メンバーと一緒にプレーする者をゲストと呼び、第一ゲストは料金が安く設
定され場合もある。平日£30、週末£45程で通常ハンデキャップ証明書は必要
としない。メンバーがゲストの面倒を見る責任があるからである。
一方ビジターというのは他の倶楽部の会員でその倶楽部からの紹介状またはハ
ンデキャップ証明書を持って来てプレーする者をいう。平日でも£60程ものグ
リーンフィーを払わなければならないし、週末はプレー不能である。
日本でいうコンペはこちらではソサエティーと呼び、企業が広報宣伝活動の
一環として週末に開催するのが普通だ。
 何処のゴルフ倶楽部にも属していなくてハンデキャップも持っていない者は、
パブリックコースでプレーして腕を上げるしか方法がない。
 ヨーロッパ諸国のゴルフ環境も英国とほぼ同じと考えてよいが、国の経済力
により払える年会費やグリーンフィーが違ってくる。端的にいって東欧諸国で
はゴルフ場開発費が削減される一方、一部の特権階級の社交場として位置付け
られてきた。ところが最近アメリカ資本がホテルや別荘地の付随施設として開
発し始めた。米国の開発手法は一般的な欧州の開発費よりも高く、メインテナ
ンスにも二倍以上のコストがかかる。それに見合うだけの集客力があるかどう
かは、今後の米国の経済状態如何に依る訳だ。
 経済的な余剰資金がゴルフブームを創生する事は、古今東西を問わず真理で
ある。
はっきり言ってリバプール近郊の全英オープンの開催コースなど、奴隷売買で
儲けたあぶく銭を遊興施設に振り分けたものなのだ。無論この事は英国人は言
いたがらないが、リザム&セントアンズはブラックプールというとても悲しい
名前を持った場所にある。
 さて国際的に見て日本のゴルフ環境はお隣の韓国と共に非常に特殊な部類に
はいる。
ヨーロッパ諸国と較べてどちらが良いとか悪いとかいったことは問題ではなく、
時代が結果をだすものなのだ。