株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 連載・ゴルフ場セミナー誌 2000年8月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第12回)

交通事情とゴルフとの不思議な相関性
 土地柄もしくはその国の交通事情
と、その国のゴルフはとても良く似て
いると思う。
 英国の場合、片側二車線以上の一般
道と高速道路の制限速度は70マイル
(1マイルは約1.6km)で、一車線の一般
道は60マイル。都市部に入るにしたが
って50、40と制限されてゆき住宅地などは30マイル制限が普通である。感覚的
には車は日本の1.6倍位のスピードで走っていて、丁度km表示をマイル表示に
読み替えると自然な感じである。
 英国は世界中で一番交通マナーが良く、追い越しをかけた後は必ず走行車線
に戻るし、譲り合いの精神も徹底している。クラクションはよほどのことがな
い限り鳴らさないし、パッシングライトは『お先にどうぞ』という意味に使わ
れる事が多い。年配者などがゆっくり運転していても誰も文句を言わず、間違って
も中抜きをしたり側道を走る無法者などいない。加えて道路標識が適切で判り
やすく、しかも高速道路はすべて無料である。
 大陸に目を移すと、高速道路に通行料を科している所が多いが、それでもと
ても安い。
速度規制はドイツのアウトバーンは無制限の区間が未だたくさん残っているし、
フランスは130km制限である。
他の諸国も概ねフランスと同様の法規制をとっている。
ただ、パッシングライトは『道を譲れ』と言う意味に使う事が多く、警笛の使
用も南に行くほど頻繁になるようだ。
ラテンの血が多くなると運転が活発になるようで、きわどい追い越しや急ブレーキ、
又強引な割り込みは当然のように行われている。
イタリアなど3車線しかない交差点に5台の車がひしめきあって止まるため、
交通渋滞が5分の3になると言う妙なジョークさえあるのだ。
 問題は此処からで、英国でプレーする外国人を英国人がどのように見ているか?
と言うと、まず米国人と日本人はプレーが遅く、更に日本人はドライバーショット
に較べてセカンドショットに問題がある事が多い。と言う評価が固まっている。
欧州大陸のゴルファーはスピードは問題ないのだが、細かい不平不満が多すぎ
て一緒にプレーするとなだめるのに苦労するそうだ。
 日本のゴルファーが英国でゴルフをすると、そのスピードと判断する事の多
さに戸惑う事が多いようだ。この原因は次の3点に帰結すると思う。

1) JGAのコースレートが英国それに較べて甘い事。これはスタンダードスクラッチスコアー(SSS)が異なる事が主な原因である。
2) 日本のコースヤーデージに偽りがある場合が多く、結果的にプレーヤーが正確な距離の判断ができない事。
3) プレーヤーがキャディーに頼ったプレーに慣れすぎていて、自身の判断能力が低い事。またハザードの多様性について行けない場合が多い事とルールについての理解が浅く適切な処理ができない事。

これらは 1) 行政の怠慢 2) 交通警察の無策 3) ドライバーの無知 という
日本の道路環境そのままに見える。
 ただプレーが遅いと言ってもこちらで『走れ』はなどとはけっして言われない。
ショットの回数が多く結果的にプレーが遅くなるのは下手なだけで罪ではない。
次のショットの地点まで何も考えずにやって来て、さっさと打たない、もしく
は打った後も未練がましく言い訳をするのが嫌われるゴルファーの典型である
らしい。こちらは罪悪とみなされている。残念なことに大多数の日本から来た
ゴルファーは米国人と共に嫌われているのだ。