株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 連載・ゴルフ場セミナー誌 2000年11月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第15回)

芝草管理の松竹梅
 秋は色々な展示会が目白押しで興味深い季節だが恒例のSALTEX(スポーツ、アメニティー、ランドスケーピング用品展覧会)に行ってきた。
この展示会は芝生環境を整備する為の器材や工法、管理手法や材料などを総括的に集めたもので、スポーツ施設の什器備品などは扱っているが、樹木の植林や大規模な土木工事までは扱ってい
ない。
ゴルフ関連の用品で個人的に興味を持ったのは、ウォーターハザードの境界線
などをはっきり示すために芝生の上に線を引くマーカー(各ゴルフ場で必ず備
えておくべきだ)と、ドイツ製の巨大な土壌分離装置だった。
 ヨーロッパでは芝生の需要がとても多く、公園やスポーツ施設に使われるだ
けでも多種多様な用途と予算に応じた選択肢がある。それだけに品質と価格には
はっきりとした順列があり、ゴルフグリーンなどは最も高度で高価な管理手法
を要求している。逆から見れば広大な敷地を使うゴルフでお金を掛けられる
のはグリーン、ティー、フェアウエーだけなのだ。
 これらの違いは、排水設備の精度と床土の組成、芝種や施肥、散水や管理方
法に特別な配慮が必要な事だろう。
まず排水設備の敷設だが、レーザー光線をガイドにした高精度の工法が普及し
てきた。
次に床土の構成は英国でもUSGA方式が多くなりつつあるが、良心的な施工業者
の中には反対する人達もいる。理由は簡単で、USGA方式はその土地で得られる
砂を使用できない(知ってました?)ので不経済だからである。
 管理手法については近年一応の方向性をみいだしてきたようだ。グリーンの
芝刈り作業でのサッチコントロール用のグルーミングモアの使用は今や不可欠
であり、その頻度とコースの性質により使用器材が決まるようだ。具体的な
メーカー名は差し控えるが、グルーミングモアと通常の手押しモアを両方使う
最も高度な管理では、通常のモアの機能は次の3つに集約される。

 1)転圧を少なく、とり廻しやすいように軽量なこと。
 2)アンジュレーションに適応するため刈り幅が狭い事。
 3)同様にローラーとシリンダー刃の軸間隔が短い事。

グルーミングモアと通常のモアを兼用する場合でもローラーとシリンダーの間
隔ができるだけ短いほうが好ましく、そのためにシリンダーの直径を小さくし
たものさえある。
更新作業では、回復が早い方がプレーヤーから苦情がこないからだろうが、
高圧の水を地面に吹き付けてバーチカルやタインと同様又はそれ以上の効果を
上げるとされる器材も引き合いが多いそうだ。
 ところで(度々自動車業界の話しで恐縮だが)英国の自動車の販売価格は他
の欧州諸国に較べると2割方高い。
さきごろ英国政府は、この価格差を是正する事と他の欧州内で購入し個人輸入
した車に対しても正規購入車と同様の保証をする事、さらに営業車などのよう
に大量一括購入した場合でもダンピングを禁止する決定をした。
この決定の是非はともかく、インターネットの普及により既存の販売形態が崩
壊してゆく事は明白である。問題は此処からで、英国内で米国製のポップアップ
スプリンクラーは本国の五割増程度、日本での価格はさらに高いから、もし
やる気さえがあれば半額程度で補修部品が手に入ることになる。(ただし生産
国が必ずしも安いとは限らないし、正規ディーラーに頼ることはできなくなる)
実際に多少の語学力とパソコンが操作できれば、無用な出費は抑えられる時代
になってきたのだ。