株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 連載・ゴルフ場セミナー誌 2000年12月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第16回)

アマチュアとプロゴルファーの適正ヤーデージ
 先日、ウエントワース倶楽部で
マッチプレー選手権が行われ、翌日に
同じティーからプレーする機会が
あった。
過去に青木功選手が良い成績を挙げた
事があるので、記憶されている読者も
多いと思う。
此処のウエストコースは全長7047yardで、プロフェッショナルトーナメントの
場合はPar72(通常はPar73、SSS74)で昨今のプロゴルファーの技術からすると
簡単すぎると批判されることもある。
私は倶楽部会員ではないが、自宅が近いせいでここ数年間毎週のようにプレー
していて(ゲストフィーの£55は痛いが)年間を通じてコースの評価を下すこ
とができる資格があると思う。夏場の状態の良い時期に数回廻っただけでコース
の評価を下すのは、倶楽部やコースに対して失礼であると同時に適切な評価に
はならないと思う。
 この時期の英国のインランドコースはおしなべて排水の問題で苦労している
事は再三に渡って述べてきたが、はたしてウエントワースも例外ではない。
私のドライバーショットは240yard程キャリーするのだが、この時期は5yard
ランすれば良い方で、泥まみれになってフェアウエーにめり込んでいる場合が多い。
9ホールあるPar4のなかで7ホールは400yardを越えるから2番や3番アイアンを
振り回す機会がとても多く、濡れて薄い芝の上からボールを浮かせるのに苦労
する。
一緒に廻ってくれる古参のメンバーは、距離的に2打で届かないホールが多く
なるが、淡々とボギーオンを繰り返し80前後で廻ってくるのだ。
 後で勘定して見たら、私はドライバーとロングアイアンとウエッジとパター
しか使っておらず、件のメンバーはロングアイアンの代りにフェアウエー
ウッドの使用が増えただけで、とても14本のクラブを有効活用しているとは
言えない事に更めて愕然とした。
 私は別に自分の腕自慢をしているわけではなく、現代においてツアーに出て
来るような職業ゴルファーと一般の倶楽部メンバーがどれほど違ったゴルフを
しているかを、紹介したいのだ。
欧州のツアープロは平均で260yardのドライバーキャーリーを持ち、200yardを
5番のコントロールショットで攻めてゆくようである。彼等にとってのチャレン
ジングなコースとは、飛距離だけから見るとこのような悪条件下で7200yard、
夏場の条件が良い時では7500yardも必要だろう。
一方の倶楽部メンバーは悪条件下で6500yard、好条件下でも6800yardもあれば
充分な難易度になる。グリーンのスピードもスティンプメーターで9feet以上
では難しすぎるという設計家も多い。
 基本的にコースの規定打数は倶楽部が決定するべきものだが、欧州設計家
協会ではPar4は500yard未満、Par5は450yard以上を推薦している。
451yardから499yardまではバッファーゾーンと呼ばれていて、Par4でもPar5で
も良く、当該倶楽部がホールの難易度を勘案して決定する。
問題は、バックティーから450yardを越えたPar5であっても、フロントティー
からも自動的にPar5とはならない事だ。フロントティーから440yardしかない
ホールは、そのティーからはPar4でプレーすべきである。欧州ではバックティー
からはPar5でも、そこから20yardも離れていないレギュラーティーからは
Par4でプレーするホールは幾らでもある。プレーヤー全体の平均飛距離が上が
るとSSSもParさえも査定し直さなくてはならないのだ。