株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 連載・ゴルフ場セミナー誌 2001年1月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第17回)

英国式ドレスコード
 コースに出るのが辛いこの季節は晩餐会が多くブラックタイ(タキシード)の季節でもある。この機会に服装のあれこれについて考えてみたい。
 その前にヨーロッパ人の平均体温をご存じだろうか。
実は男女とも限りなく37度に近く
少なくとも日本人男性の平均体温より0.5度は高い。冷え症の女性に至っては
1度近くも差があることになり、奇妙な例えだがC3植物とC4植物程も違うのだ。
そういう事情で彼等は冬の寒い日でも太陽さえ出ていれば半袖でゴルフをし
長袖のYシャツなど持っていないと言う輩までいる訳だ。
 体温が高いと当然体臭も発散しやすく、逆に彼等はとても気を使って制汗剤
や香水を多用することになる。
もっとも彼等から言わせると日本は空港に降り立ったとたん醤油臭く、日本の
公共交通機関はおしなべて穀物臭(つまりはオナラ臭い)らしい。
当然、ゴルフ場でも汗臭い衣服のまま食堂に行く事など常識では考えにくい事
らしく、ジャケットを着用すべき場所には予めシャワーなどで身を清めてから
着替えるように子供の頃から躾られている。
その代りスパイクス・バーと呼ばれる気楽な場所もあって、もっぱらベットの
精算などはこちらで行われる。
 ゴルフ場の服装規定英国ではドレスコードというは倶楽部ごとに異なって
いて、その倶楽部の生い立ちを顕わすように思えて楽しい。
例えばラグビー用のラガーシャツは襟が付いているのに汗臭いというイメージ
があるためか禁止の所が多いし、トレナーは普通駄目である。また破れたり
ツギの当たった衣服を着てはならないという所や、ズボンには折り目が付いて
いる事が望ましいという所、コース内では赤い衣服しか着てはならないが
クラブハウス内では逆に赤い色は使ってはならないという倶楽部、明文化され
てはいないがスリップオンタイプの靴は好ましくないという所(靴紐の無い靴
はモノグサ者の履物らしい)まである。また、スニーカーではクラブハウスに
入れない場合が多いから日本ではやっているスニーカータイプのスパイクレス
シューズは困る。等など数えればきりがない。
 たかが服装とはいっても馬鹿にはできない。日本ではあまり気にもしていな
い事が大きな意味を持つ場合もある。
ビジネスや公的な場所では毛織物を使い、毛糸で編んだ製品を着用してはなら
ないという常識もあまり知られてはいないだろう。
某財閥系企業の役員が英国企業との会議の場でスーツの下に着ていたカシミア
のベストの事で酷く恥をかかされた。という話しや、商談にきた英国人が対応
に出た日本人駐在員のカーデガン姿にびっくりしてそのまま帰ってしまった
などという話しはあながち嘘とは思えない。
そんな非常識な服装で許されるのは英国では社会的地位を持ち得ない三流以下
の会社だけだったのだ。
 ところで、英国でも超一流の誉高いアーサー&アンダーソンというコンサル
ティング会社では、先ごろ全社員に対してカジュアル・フライデーどころか
週日もスーツやネクタイの着用を禁止した。
理由は簡単で、顧客が伝統ある優良企業の重役から新興のIT産業の創業経営者
に移ってしまった結果、彼等のカジュアルな服装に合わせたほうが、営業的に
メリットが大きいと判断したためである。
ところが大陸に較べて英国人はカジュアルな服装が垢抜けない。自国の
ファッション雑誌にまで散々にこき下ろされるありさまなのである。