株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 連載・ゴルフ場セミナー誌 2001年2月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第18回)

欧州人から見た日本のゴルフ
 フランクフルトで疲れたせいか
体調を壊し、悪い夢ばかり見るように
なった。
きっかけは、国際会議で知り合ったドイツ人の初老のコンサルタントと若い建設業者と昼食を共にした事に始まるのだが、何事にも整然としたルールを好む彼等の質問はとても明快だった。
 彼等はゴルフ関係者なので日本の預託金制度について一応の理解はしている。
彼等の疑問は『預託金制度が破綻した現在、ドイツに伝わってくる情報ではゴ
ルフ場の対応は対処療法であり、抜本的な解決方法ではない様に思える。預託
金制度の矛盾を追及する声が聞こえてこないのが不思議に思える。是非日本の
現状を知りたい』と言うものだ。
彼等が西欧の純粋な倶楽部組織しか知らないのではと思い『日本のゴルフ会員
券は株と同じ様に毎日相場が立ち、金融商品としての意味合いもある。倶楽部
会員はプレー権の他に利殖目的で会員券を購入する事もあったのだ。だから経
済原則に基づき不況のときは投資は回収できない』としどろもどろ説明した。
『5万円のドライバーを買ったらヘッドカバーが付いてきた』と言うのを
『5万円のヘッドカバーを買ったらドライバーが付いてきた』と言い替えるよう
なものだな。と建設業者は軽口を言って納得してくれたが、コンサルの方は
『金融商品だとしても運用責任があるはずだ』とくいさがる。『訴訟を起こし、
会社や個人を罰しても投資額が戻ってくる訳ではないから、無駄なお金を使い
たくないのだと思う』と答えてしまった。
 ロンドンに戻ってから、ゴルフ倶楽部の会員資格をヘッジファンドやデリバ
ティブと同じ金融商品として説明してしまった自分に腹を立てたのだが、
一方で外国人の投資家から見ると日本のゴルフ場はどのように写るのだろうか?
と言う疑問も湧いてきた。
 バブル期に開場したゴルフ場の多くは、親会社があると思う。親会社は預託
金という無利子無担保の莫大な資金を当て込んでゴルフ場を造ったとも言える
からである。
ところが、その親会社が業績不振で外国企業に身売りする事になると、小会社
であるゴルフ場は負債を抱えたお荷物と写るだろう。買収する側の外国企業は
現在の実勢価格による資産評価を要求し、ゴルフ場には多額の不良債権ありと
判断するだろう。
ところが親会社の不良債権の額に較べてゴルフ場の預託金などたいした額では
なく、外国企業は額面の2割程度の預託金の支払には応じる構えを見せる。
親会社の負債を含め800億が830億になっても、それで別の事業展開ができ買収
企業の役員の左遷先を確保できれば良いのだ。彼等の経営方法を色々考えて
見るとあるアイデアが浮かんできた。
 コースに関してはプレーフィーさえ安ければ集客力があると割きり、セミ
パブリックとしてぎりぎりの人数で管理する事とし、クラブハウスは全く別の
用途に使うのだ。
会員の権利はプレー権にあり、プレー後の入浴までは含まれていないとすれば
可能だ。
ゴルフ場のクラブハウスは幸か不幸か公衆浴場の規制に合致するように造られ
ている。
程よい大きさの厨房スペースと大食堂や宴会カラオケスペースも、立派なトイレや
受け付けカウンターも、誂えたような場所にある。
さらに都市計画法の網の掛かっていない所ではパチンコ店等の遊興施設も可能
だろう。
 劃して、人里はなれた場所に建つ豪華な建物は、200台の駐車スペースをもつ
温泉付サウナにパチンコ店を併設したような一大レジャーセンターとして生ま
れ変わるのだ。