株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 連載・ゴルフ場セミナー誌 2001年7月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第23回)

古めかしいコースでの競技会
 急激に日が長くなり、順番に木々の新芽がめぶくこの季節の英国は、何度経験しても新鮮な驚きに満ちている。
今回も現代のツアープロの技術に対抗
し続けるウエントワースの話題である。
 英国ではバンクホリデーという国民
の休日が年に数回ある。これは日本の
振替休日と同じで3連休になるように月曜日に設定される。欧州ツアーでは
この
休日を利用して入場者を増やす試みがなされているので始めに紹介する。
競技開催週の月曜日にマンデートーナメントを行い火曜日が練習日、水曜木曜
とプロアマ競技会、本戦は金曜日から3連休を利用した4日とすれば、通常の開
催期間に比べてさらにプロアマが1日余分にとれ、振替休日のギャラリーが
見込めることになる。
休日は何年も前から確定している訳だからスケジュールは調整可能だし、次の
週のトーナメントと月曜日がかち合うが、新人の登竜門として割り切れば問題
ではない。
世界的に見ると日本は今や国民の休日がとても多い国である。と言う事は月曜
日が振替休日になる可能性が多く、トーナメントの主催者や開催コースはそれ
だけ儲かる可能性がある事になる。
 さてコースの話しだが、基本的に1930年代に造られた7000ヤード程度のコース
では現代のツアープロ達にとっては短すぎる。ウエントワースでドライバーを
使うのは多い人で6回まで、571ヤードのパー5を2鉄2回で乗せて来る猛者が
存在する現在、7400ヤードでも短いという人もいる。最近のコース設計家は
250m(約275ヤード)をランディングポイントに設定する事が多いのだ。
幸運な事は、昔造られたドッグレッグは曲がり角までの距離が短く(ほぼ230
ヤード)結果的にドライバーの使用制限をしている事である。
 コース管理の技術でみるとグリーンとフェアウエーのコンパクションがとて
も高く、グリーンに直接オンさせてしまうとバックエッジに転がり出てしまう
ように設定されている。因にグリーンのスピードは10.5フィート程で特に速い
という訳ではないが、ピッチマークが殆どつかないほど固く、フェアウエーから
7番以下のショートアイアンを使える時以外、誰も直接グリーンを狙って来ない。
 この様な設定では、グリーン手前のエプロン部分がとても重要な役割を担う
事になるが、それこそが古いコースを現代に蘇らせる鍵になると思う。ガード
バンカーからの傾斜やリッジやハローが複雑に絡み合うこの部分の出来如何が、
トーナメント全体のスコアーを決めるといっても過言ではない。
そのためエプロン部分は通常のアプローチモアではなく、グリーンモアを使って
8mm程のクロスカットにし、一般グリーンと見まがうばかりの仕上りで、計測
すると4フィート程な速さであった。
 もう一つの鍵は、ラフの始末だろう。トーナメントではギャラリーはラフを
歩くので、ラフの芝が寝てしまいかえって打ちやすくなる事があるが、これで
はペナルティーにならずフェアーではない。
セミラフは40mm程の均一な刈り高でスピンコントロールをする一方、ラフは雑
草も含めて刈り高は一定していない。球は低い所に止まる場合が多いから、
ボール手前の草の度合によって高度な技術と判断が要求できるのだ。
 実はグリーンキーパーはスコットランド出身で管理手法、特に雨の多い冬場
の排水や窒素肥料過多には懐疑的であったが、今回のコース管理を真直に見て
彼の求める方向性が理解できた気がした。