株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 連載・ゴルフ場セミナー誌 2001年8月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第24回)

多様化してきた欧州のスタート形式
 クラブハウスからのゴーイング・アウト、カミング・イン一辺倒であった欧州のスタート方法にも、変化の兆しが見えてきたので紹介しよう。
27ホールズのコースが9ホール毎に
3ヵ所からスタートする方法は以前
からあったが、36ホールズのコースの場合は2つの18ホールと考えて現在も相変わらずワンウェィ方式が主流を占め
ている。
 最近増えてきた方式は、2ボールと4ボールのスタート時間をずらしたり、
乗用カートの使用時間を早い時間帯に設定し、遅い組をパスする面倒を減らす
試みである。
プレー速度が速いと判っている組を予め先にいかせれば、無用なトラブルが避
けられる。
総じてマナーの良い英国でも遅い前組に苛々する機会が増えてきた為らしい。
 欧州ではラフに入ったボールを捜す時、後続組が待っていないかどうか必ず
後ろを確認するように躾られる。ごく一般的に言って、HC18程度の4ボールは
1ラウンドに1回は抜かされるように思うが、それでもラウンド時間は4時間半位
なのだ。また、倶楽部ルールには必ず優先権の事が書いてあり、バックティー
からの倶楽部マッチが最優先で、以下2ボール、3、4ボールと続き、1人の練習
ラウンドには何の権利も与えられず、総ての組をパスさせる義務がある。以前
所属していた倶楽部では女性の優先権まであって面喰らった記憶がある。
 プレー速度によるスタート時間制限の試みは、当初は不満の解消が目的で
あったが、収益増加にも繋がる事が判ってきた。全体のプレー速度が上がれば
収容人数が稼げるのは自明の理なのだ。
 一般にプレー可能時間の長さと収容人数の計算は以下のように考えられてきた。
日照時間が長い場合はスタート時間に余裕のあるワンウエィシステムが収容人
数が多くなり(月例会などにも都合良い)、一定時間内に少しでも多くのプレー
ヤーを捌きたい場合は通常のアウト、インスタート方式を含むマルチウエー方
式が選ぶ方が効率が良い。ショットガンスタート方式などはこの最たる例で
ある。
このマルチウエー方式はスタートのみならず終了時間帯も短いから、コンペには
都合が良いようだ。
 日本では4人一組が当り前と考えられ過ぎ、結果としてプレー速度が遅くな
り収容人数も制限されてきたようだ。
確かに、欧州の古いリンクスコース等では昔ながらのマッチプレーの伝統を守
るためか、偶数プレーヤーのスタートしか認めない所もあるが、日本での画一
的なスタート人数制限は考え直す時機にきているように感じる。
プレー人数やハンデキャップ合計、乗用カートの使用等を勘案して速度の速い
組からスタートできるシステムを確立するか、週末などの入場者の多い時用の
システムを考えると良いだろう。
 極端な例だが、週末用のシステムを紹介しよう。大概の日本のコースには
ハーフに1ヵ所お茶屋が在り、合計4ヵ所から同時にスタートさせることが可能
である。
ラウンド5時間としても12時間以上日照があれば午前と午後の2回スタート枠を
設けることができるわけだ。
6分間隔で1時間、掛ける4ヵ所のスタートを2回とすると最大で80組が無理なく
収容できる計算だ。
昼食の時間が取れず、食堂の売り上げは落ちるだろうが、グリーンフィーで充
分賄えるし、渋滞がなくプレーヤーからも好評だろう。また従業員から見ても
多少忙しくても給料の高い方が嬉しいし、給料が高く設定できれば質の良い労
働力も集めやすいと思う。