株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 連載・ゴルフ場セミナー誌 2002年2月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第30回)

ユーロ元年と環境ビジネス
 欧州統合の目玉である欧州通貨
(ユーロ)が2002年元旦から機能し始める。
空港の両替所では12月半ばから交換が始まり、市中でも周到な準備が為されたとは言え、2月末には長い間為れ親
しんできた国内通貨が通用しなくなる
と言うのは、寂しさを通り超して痛快でさえある。
 12月の半ばに欧州ゴルフ場設計家協会の学会がケンブリッジ大学構内であった
ので出席してきた。この機会に欧州全体のゴルフ場数をおさらいしておこう。
英国と南北アイルランドの合計は2,983コース、イングランド1,890、スコット
ランド542、ウエールズ159、南北アイルランド392である。
一方大陸に目を移すとスゥエーデン420、ドイツ604、フランス511、スペイン
247、オランダ130、デンマーク131、ノルウェー115、フィンランド97、オース
トリア110、イタリア222、ベルギー76、スイス72、ポルトガル59、チェコ23
アイスランド53、スロベニア8、ハンガリー6、ルクセンブルグ6、ギリシャ4
などで合計2,894コースである。欧州全体では5,877コース、その約半数が大陸
に在る事になる。ここ数年の大陸側の増加率はは毎年7%もあり、ブームとは言
えないまでも堅調な伸びを示している。
 世界全体で見ると、28,562コースの内、米国が16,743コースだそうだから
欧州全体の5,877コースを引くと、日本を含むその他の国に5,942コースが存在
する。
 EUと一括りにいっても、各国の税制はばらばらのままで、日本で5%の消費税
は英国で17.5%、フランスで19.5%、ドイツで16.5%と各々違う。が、地球温暖化
の原因とされるCO2に関しては統一されていて、自動車の例では燃費から換算し
た車種毎CO2排出基準5g毎に1万円程の税金が加算される仕組になっている。
 1Lのガソリンを燃やすと実に2.4kgものCO2を排出する事が知られており、
片道50kmのゴルフ場まで燃費10km/lの車で往復すると、毎回24kgのCO2を巻散ら
していることになる。
これを吸着させようとすると樹高15mの大木が1年かかってやっと200kgのCO2を
吸着できるのだから、年間25回ゴルフ場に行く人は24kg×25=600kg、つまり
ゴルフ場の往復だけに3本の樹木が必要なのだ。別に、欧州の自動車の排ガス
規制ではCafeという基準があり、各メーカーの販売台数における加重平均とし
て08年までにCO2排出量を145g/km以下におさえる目標値が定められている。
当然燃費の良い小型車の販売比率の高いメーカーほど有利で、大排器量のライン
ナップしか持っていないメーカーは燃費の良いディーゼルか小型車を必要とし、
なりふり構わず企業合併と小型車の開発に凌ぎを削っているのだ。
 さて今回の学会のテーマはリゾート開発や宅地開発と並行して開発される
ゴルフコースに関しての環境問題を討議すると言うものであった。
日本に奇妙なコースを幾つかデザインしたデスモンド・ミュアヘッド氏を始め
各パネラーはこぞって、ゴルフ場は一般に言われているのと逆に自然環境を守
る働きをしていると力説していたが、砂漠地帯ならいざ知らず食物連鎖が複雑
に絡み合った中緯度地帯では慎重に考える必要がある。
 今回の会議は、米国資本の対抗して大規模開発を受注したいという欧州側の
宣戦布告のようにも受け取れたが、階級制度に根差した倶楽部組織からの脱却は、
設計家達が考えるほど簡単ではない。日本のバブル前夜のような安易な打算を
感じたのは私だけではないと期待したい。