株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 連載・ゴルフ場セミナー誌 2002年3月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第31回)

BIGGA主催のゴルフ展示会
 BIGGA(英国グリーンキーパー協会)
主催のゴルフ展示会がイングランド
北部の街で開催されたので日帰りした。
欧州設計家協会もブースを出しており、その手伝いもしなければならなかったのが、グリーンキーパーの講習会が3日間通しで行われるなど、好況な英国経済を反映してかソフト、ハード共になかなか充実した展示会であった。

 ソフト側ではGPSを利用したゴルフ場内の地図システムがありカートの誘導
けでなく管理側からも利用できそうに感じた。平面解像度1mで約40万円だそうだ。
次に興味を引いたのは土壌や水質の分析機関のブース。物理的化学的な検査
の検査価格が思いの他安かった事だ全てのUSGAテストセット料金で5万円程度、
土壌有機物の分析や水質検査など1万円ほどでできるらしい。

 ハード側では日本に較べて大形機械の需要が多いらしく、米国のメーカーが
最新機種を持ち込み商品説明だけでなく代理店も併せて募集しているブース
も目立っていたそんな中でついに出たかと思ったのは7連のロータリーモアで、
凹凸のあるラフを3.5m幅で一挙に刈れるものである。トラクターに牽引される
アタッチメントの価格は250万円だそうだ。

 レーザー光線をガイドにした排水管敷設システムは、来月号で報告するとして、
今月号の特集記事の中で書かれている、セント・アンドリュースのグリーンキーパー
のエディー・アダムスが昨年の暮から取り組んでいる土壌改良工事に使われた
機材も出展されていたので、もう少し詳しく説明しておこう。

 ケント州の機材メーカーが開発した空気注入システムと呼ばれるもので、
60cm×120cmの範囲に32本のドリル同数の砂を搬入するホースを備え、
グリーン面に垂直に穴を開けると同時に予め計量された砂を穴に詰めてゆく
工法である。ドリル直径は10mmから32mmまで、深さは25mmから450mmまで
対応するから、大抵の不透水層は貫通できる。更に埋め戻しする砂は乾いて
さえいれば、粒径も化学的性質(pHなど)も自由に設定する事が可能だから土壌
改良にも使える。実際進歩的な管理をするコースから実績が上がっている。

この工法は旧来の土のグリーンだけでなくサンドグリーンでも圧密による
(タインの届く範囲の直下にできやすい)ブラックレーヤーにも効果的だろう。
葉書大の敷地毎に1本の縦樋を通すようなものだから透水効果は劇的だし土壌
改良として見ても、極言すれば十数年の間に土床を砂床に置換する事も可能である。

 問題はグリーンに大穴が空いてしまう事だろうが此所まで大きくなる逆に
対処の方法もあるだろうナーセリーからドリルと同径のホロータインで抜いた
コアを持ってきて、ワインのコルク栓の様に詰めていけば良いと思う。
うまくやれば、ホールカップの跡と同様に次の日からの使用も可能だろう。

 さて、近年の傾向としてソリッドタインからホロータイン、更にドリルへと
バーチカルドレインが大形化している。それに伴い機材も大形化し弊害も出て
きつつあるようだ。

第一は大形機材が重く、微妙なアンジュレーションを破壊してしまうことだが、
これは注意深く作業すれば避けられるだろう。第2の問題は個々のゴルフ場が
重機を保有するには高額すぎる事だが、元々これらの重機はオペレーター込で
リースされる事を前提に価格設定がなされている。
本当の問題は、未だにアウトソーシングを受け入れられないキーパー自身の問題かもしれない。