株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 連載・ゴルフ場セミナー誌 2002年7月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第35回)

多様化するグリーンの判断基準
 アスコット競馬場の管理者と話す機会があり、面白い話しを聞けたので紹介しよう。
つい最近まで馬場の状態を判定する方法は、ステッキ(コウモリ傘の柄の部分)を地面に突き刺す時の抵抗感とその状態から地面を掘り起こすようにステッキを倒した時の抵抗感を長年の経験から判断する事で、重馬場か良馬場か
決定していたのだそうだ。
一見原始的に思える方法だが、実際の馬の蹄の動きに近く、単位あたりの荷重
も近いので、結構精度が高いらしい。
因に、馬場の刈り高は80mm程で日本のゴルフコースではヘビーラフに相当する。
 ゴルフ用のグリーンでも最近はスティンプメーターによる速さだけではなく、
コンパクションメーターによる硬さも話題にされるようになり、より実際の使
用条件に近づいた。以前はテレビの影響からか止まるグリーンが良いグリーン
であるという誤った認識が流布していて、巨大なピッチマークができるような
ふかふかのグリーンを造る傾向があったのだ。
本当に良い状態のグリーンとは、滑らかな転がりが得られるという絶対条件に
加え、7番以下のショートアイアンで打たれたスピンの効いた球だけが3バウン
ド目で止まり、ラフから打たれたスピンの解けた球をはじき飛ばしてくれる程
度の硬さを持っていなければならない。と言われる。
更にアベレージゴルファーのナイスショットは殆どが少し噛んでおり、本来掛
かるべきスピンが半減したフライヤー(棒玉)なのだそうだ。
つまり理想的には、グリーンのフロントエッジまで150ヤードを超えた地点から
のセカンドショットや、セミラフからの打球はエプロン部分を落下地点として
使わない限りグリーンからこぼれるわけで、片手シングルならまだしも一般の
ゴルファーには難しすぎるような気がするが、一応の指標にはなるだろう。
 この場合、まずエプロン部分のアンジュレーションと芝種、刈り高、コンパ
クションが問題で、何よりもしっかりした面造りが重要だろう。
次に刈り高の問題だが、上級者がスピンを掛け易いようにフェアウエーの刈り
高を落とし、その代りフェアウエーの一部をセミラフに置き換えれば、刈込み
頻度の関係から作業時間の短縮になる事が判る。実際、フェアウエーとラフの
境目としてしか認識されていなかったセミラフを広い面積に拡大して活用しよ
うという動きもある。セミラフの拡大は上級者には難しくなる一方、アベレージ
ゴルファーは余り苦にしないし、ヘビーラフに入る球を止めてくれるから進行
も速くなるそうだ。
 もう一つ、グリーン廻りのチップショットで最近トーナメントプロ達が言い
始めたスリッピー(滑る)とグリッピー(噛む)と言う感覚も注意を払う必要
が在るだろう。
どのような条件の時にグリッピーと感じるかは現在調査中だが、グリーン表面
の水分量だけではなく、芝種と刈り高と床の硬さのバランスが鍵らしい。
もしかすると近年増えてきたウレタンカバーのボール表面の親水性が影響して
いるのかもしれないが詳しい事は判らない。
只、彼等の最近のアプローチを見ているとロブウエッジを手にしている事が
多いが、正規のスピンボールを打つ事は少なく、過半が打点を少しトウ側にず
らして回転の少ない柔らかい球を使って寄せてくる。
そうしたアプローチでは、最初にバウンドする時の食い付きが気になるのだ。
また、それを容易にするためにペリメーターウエイトのクラブは使わず、旧来
型のスィートスポットの小さいウェッジを使い続けるのだそうだ。