株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 連載・ゴルフ場セミナー誌 2002年11月号    出版社:ゴルフダイジェスト社
 (1)「トム・モリスの国から」(連載第39回)

現状からの脱却は現状認識から
 アジアの活気と言うべきか混沌と言うべきか。先進国の仲間入りを果したと自認する日本に、過去の遺産で食っていると言われて久しい英国から帰ってくるとその違いの大きさにびっくりしてしまう。規制や規範は多いのに、其々が相互に連携しておらず、何を拠り所にして良いのか苦慮するのだ。

 結局大勢に迎合するか、著名人の尻馬に乗るか、自分の直感を優先するかと
いう三択枝になりがちで、本質的な吟味は不本意ながらお預けになるらしい
通信網の発達のおかげで、今や何処に居ても世界中の情報が手に入るように思
えるが、情報という物は元々発信する側の利権や都合によって相当歪んでいる
事を斟酌しなければ、真実は見えてこない。
当たり前だが、英語しか話せない人達は英語の情報に頼るしかない。ところが
英語しか話さない人達の人数は世界中から見れば極少数派で、スペイン語を筆
頭に非英語圏の人達の方が圧倒的多数を占めるのだ。更に世界人口の四分の一
はお隣の中国だし、インドもアラブ諸国もアフリカ大陸も人口という切り口から
見れば大きく、経済的な観点とは違った地図が描かれる。
つまり、わりと近い過去に国際間の搾取に成功した少数の国が、現在の世界を
操ってきたわけだ。
しかも日本から見れば、情報源となる海外駐在員は大概英語を話すから、日本
国内に入ってくる情報は世界中に溢れる情報の中でも英語圏の人達に都合の良
い情報ばかりを取り込んでいるように見える。
結果的に先進国に対する憧ればかりが募って西欧崇拝になるか、追いつく対象
として粗探しをするかになりがちで、全体像を見失い足元が疎かになっている
らしい。
 このような環境下では無理からぬ事にも思えるが、ちょっと立ち止まって考
え直して欲しい。ゴルフに限って言えば芝草管理にせよ経営手法にせよローテ
クの部類に入るという事実を再確認すべきだと思う。基本的にはグリーンキー
ピングは農業の一部で砂や肥料などは発展途上国産の物も多いし、倶楽部経営
など百年も前に手法が確立されている。先端技術の粋を集めたと宣伝している
クラブヘッドやシャフトでさえ大して革新的ではないのだそうだ。
 基本的な手法が確立されてしまった以上、当然経済原則に則って激しい寡頭
競争とコスト管理や効率化が求められ、今までのようには行かないだろうが
現状を認識すれば現在の状況から脱却する答えを見つける助けになるはずだ
答えを見つける上で、私が考える唯一の判断基準は、現状の製品やシステムを
仮想の海外に持っていって、現地で受け入れられるかどうか考えて見る事なのだ
ゴルフの先進国を英国や米国とし、発展途上国をお隣の中国と勝手に仮定すれば、
日本や欧州大陸の国はその中間に位置するはずだ。
もし先進国向けに現地適合コストを加算しても受け入れられるとしたら、何ら
かの普遍的な美点がある証拠だが、先進国に持っていって受け入れられなけれ
ば発展途上国に持っていけば良い訳だ。
不幸にして発展途上国でさえ受け入れられないような物やシステムは廃棄処分
しかないだろうが、残念ながら日本のゴルフには廃棄処分に廻すしかない物が
沢山あるように思える。
何度か全英オープンの取材をしただけなので正確な数字とは言いきれないが
あのクラスのゴルフ倶楽部でさえ支配人の年俸は600万円弱ヘッドキーパーの
それは400万円強だと思う。