株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 月刊ゴルフメイト誌 2003年1月号                 出版社:丸善
  「迫田耕のアカデミック講座」(連載第2回)

プレイヤーから見た戦術
 前回大まかにハザードの役割と考え方を書いたので、今回はもう少しプレーヤーの立場から見た戦略について見てみましょう。
グリーン周りでウエッジを使い、
トップさせて肝を冷やした経験は誰にでもあると思います。
球が低く出た事とスピンが掛からなかったために予想外の距離が出てしまった
のですが、考え方によっては実戦でとても有効な手段になるのでご紹介しましょう。

読者諸氏はご自分のアイアンの正規の飛距離はご存知だと思いますが、ハーフ
トップさせたときの飛距離は考えてみた事はありますか?
想像してもらえればすぐに判ることですが、3番アイアンでトップすると正規の
飛距離よりも30y手前ということが良くありますが、9番では20yも余計に飛ん
でしまいます。

5番なら、7番ならどうか?と、考えてゆくと、大概の人が7番か8番アイアン
ぐらいで正規の飛距離とトップさせたミスショットの飛距離が一致するようです
ということは、距離にして140ヤードから150ヤード近辺からのセカンドショットは、
ダフりさえしなければトップしても構わないエリアだと考えることができるのです
実際、パー3のホールインワンはこの距離からが圧倒的に多いのです。
もう一歩突っ込んで考えれば、テティーショットでこの距離を残すような攻め
方はとても合理的なのです。

例えば350yに満たない短いパー4で150yを残すことを考えれば、ティーショットで
200y以上打つ必要などありません。と、なればドライバーを振り回す必要など
なく、3Wでもロングアイアンでも良いのです。さらに先ほど考えた通り、長い
クラブはトップすると飛距離が落ちるので、少し厚めにボールにコンタクト
したい訳ですが、今度はティーアップできるのですからダフる危険性も少ない
ので一石二鳥なのです。

結果としてこの方法はとても安楽にパーが取れる戦略ですが、逆に言えばピン
傍にスピンの効いた球で止めてバーディーを狙う戦略ではありません。あくまでも
パーを重ねて80以下で回ることを主眼にした方法なのです。
さて、以上はハンディキャップのあるアマチュア向けにトップした低い球の
利用方法でしたが、今度は競技志向の強いプレーヤー向けにスライスやフックの
利用方法も紹介しておきましょう。

右打ちの場合で話を進めると、真直ぐ飛んでゆく打球に比べて、コントロール
されたフェードボールは少し高く上がり、右に流れながらほんの少し飛距離が
落ちます。
逆にドローボールは少し低く出て左に切れながらランで距離を稼ぐようで、
ほんの少し距離が伸びるといわれていますが、あまり大きく曲げると逆に飛距離
を失うようです。
もっと横回転の掛かったスライスやフックはその曲がり方に応じて飛距離を
失いますが、スライの方が高く上がる為か飛距離のロスが大きいようです。
これらを纏めて進行方向の左から並べると、フック、ドロー、ストレート、
フェード、スライスですが、明確な基準はありません。

ところで、球の行方を左右の曲がりを横軸に飛距離を縦軸に採って眺めてみると、
ひらがなの「へ」の字のように並んでいる事にお気付きだと思います。
実はこの事が大変重要な意味を持っているのです。
例えば右にドックレッグし、曲がり角までは距離的に届くホールのティーショット
を考えて見ましょう。
すると「へ」の字の理屈から、スライスやフェードで攻めるよりはフックや
ドローで攻めた方が、フェアウエーを捕らえる確立がずっと高いことが判ります。
「へ」の字の左半分がフェアウエーの曲がり方と一致しているからです。
一般に言われている「コースなり」の攻め方は、ラフに入っても良いから残り
の距離を一定させたいという特別な場合を除いて合理的ではありません。
もっともこの方法は、瀬戸内海ゴルフクラブのように樹木が少ない場合しか
使えませんが、、、