株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 月刊ゴルフメイト誌 2003年3月号                 出版社:丸善
  「迫田耕のアカデミック講座」(連載第4回)

ゴルフに使われる単位とスコアーについて
 今回はゴルフに使われる単位とスコアーについてのお話です。
テレビのゴルフ番組を見ていると、
ドライバーの飛距離やアプローチの距離を表現するのにはヤードを使っているのに、グリーンに上がった途端4メートルのスライスラインなどとメートル法を使っているのを不思議に思います。ご存知のように1ヤードは約0.9メートル
ですから、目標に近づくほど大きな単位を使うのは不自然に思えるのです。
 英国と米国では旧来のヤードフィートを慣習的に使っていいますが、世界的
に見ればこの単位系を使い続けている国は極少数派なのです。
ゴルフに関しては創始国に敬意をはらってか、この単位系を使い続ける事
容認しているに過ぎません。
纏めてみると、1インチは2.54センチメートル、1フット(複数形でフィート)は
12インチで30.48センチメートル、1ヤードは3フィート(36インチ)で91.44
センチメートルという関係になっています。
もともとこの単位系は日本の尺貫法と同じで人体寸法を基準にできていて、
インチは手の中指の第二関節と第三関節間の長さですし、フット(フィート)
は足跡の大きさ、ヤードは歩幅を基準に決められたものです。
ただ、体格の良いアングロサクソンの男性を基準にしているらしく、身長173
センチメートルの私は30センチの靴は履きませんし、1歩1ヤードで歩く事は
不可能です。
ゴルフ場では3歩2メートルで勘定するのが現実的に思えます。
テレビ番組でもメートル法に統一するか、ヤードフィート法を正確に使うか
考えて欲しい気がします。

 さて、今度はスコアーの話です。
驚かれるかもしれませんが、パーという概念が一般的になったのは第二次世界
大戦以後のことです。
第一次世界大戦から第二次世界大戦までの間は、現在のパーと同じような意味で
ボギーという言葉を使っていました。それ以前は標準打数という概念が無く、
ゴルフゲームは全てマッチプレーだったのです。
マッチプレーでは相手より良いスコアーならばそのホールの勝者となり、
ホールごとの勝ち負けを通算してゲームの勝利者を決めていました。
ですからホール数は18ホールである必要などなく、標準打数も決める必要も
なかったのです。
勝ち負けを記録しておくために、シャツの袖口を使った事から、スコアーカード
はYシャツのダブルカフスの大きさを基準に決められ、それが冬場の
6インチリプレースの論理的根拠になったそうです。
時代が下って、沢山のプレーヤーが同時に競技をする必要ができ、ホールごとの
標準打数を決めるようになりました。また徐々に1ラウンドが18ホールズの
ストローク数を争うゲームになって行ったようです。
その中で、ストロークインデックスといってコース内の難しいホールから
順番に番号を振り、ハンディキャップの違うプレーヤー同士も一緒に楽しめる
仕組みも現れてきました。
つまりハンディキャップ14の人は、ストロークインデックスが1番から14番
までのホールでは、スコアーカード上のパーより1打多いスコアーがその人に
とってのパーになるので、ハンディキャップの異なる人との対戦も簡単に
なったのです。
さらにコースによって難しさはバラバラですので、色々なコースで回った
スコアーを比較するための工夫も必要になってきました。
SSS(スタンダード、スクラッチ、スコアー)呼ばれている、ハンディキャップ0の
プレーヤーがそのコースを回ったらどのくらいのスコアーになるかという
指標があります。
これは、69.8とか73.4とか小数点をつけて示されています。
このように、より多くの人が同一の基準で楽しめるような仕組みは今後も
考えられていく事でしょう。
ゴルフゲームにおいては、250ヤードのドライバーショットも1フットのパットも
1打ですから整数値しかありませんが、心情的には限りなくパーに近い惜しい
ボギーもありますし、20ヤードのアプローチパットが運良く入りバーディーに
なる事もあるでしょう。
近未来には、小数点を付けたスコアーが登場するかもしれないのです。