株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 月刊ゴルフメイト誌 2003年5月号                 出版社:丸善
  「迫田耕のアカデミック講座」(連載第6回)

クラブハウスとコースとの位置関係について
 敷地全体の中でクラブハウスの位置はとても重要で、設計者が一番初めに考えるべき問題です。
今回はクラブハウスとコースとの位置関係について考えてみましょう。
 スタートしてから少なくとも2ホールは朝の太陽が眩しく、逆光になるとボールを見失いがちです。
つまり、アウトとインの両方からスタートする事を考えると、1番2番、10番11番は
東向きのホールを造る事は避けなければなりません。同様に最終ホールと
その前のホールも夕日の眩しさを避けるため、西向きのホールは造らないのが
普通です。

という事は、8番9番17番18番はドッグレッグしていたとしても、西向きに
打つショットをさせないように計画すべきです。
纏めてみると、18ホールの中で8ホールは東西の方向に対する制約を受け
ホールを横断するような進入道路は避けますから、クラブハウスの位置は敷地
全体の中で南北の端から東側にあることが望ましい訳です。

またコース内の数箇所からクラブハウスが望めると、ほっとするのですが、
逆に何処からでも見える高台にあるクラブハウスに戻るためには、きつい
打ち上げの最終ホールを造らなければなりません。
クラブハウス自体は敷地全体から見れば大きなものではないかもしれませんが、
200台以上の駐車場と練習グリーン、アプローチエリアやドライビングレンジ
などを考えると相当な面積になります。

しかし、一般道から長い進入道路を経てクラブハウスに導くのは不経済ですし、
高低差のある敷地の中で丁度良い高さで見晴らしが良く、地盤の良い所を
見つけるのは容易い事ではありません。
さらに、従業員やキャディーさんの導線や厨房関係資材の搬入経路はお客様の
目に付ないよう計画しますから、クラブハウス内外の導線は複雑になりがちで、
増改築工事の際常に問題にされてきました。
会場以来50年を越えるような古い倶楽部は、クラブハウスの改築を考えている
はずですが、営業を続けながら工事を同時進行させるのは予想以上に大変な
作業です。
 
次にコースレイアウトの基本的な作法もご紹介しておきましょう。
日本でも欧米でも8割のゴルファーがスライサーなのだそうです。
ですから、敷地の外周にホールが接した場合、時計回りの方向にホールが設定
してあれば多くのスライサーのOBを防ぐ事ができます。
また設計者はこの連載の初回で述べた科罰型、戦型、英雄型設計を考える前に
考える事が沢山あります。

同じような長さのホールが連続しないように、風向きや太陽の位置がホール毎に
わるように打ち上げや打ち下しのホールが連続しないように、パー5
パー3のホールが18ホールの中で数箇所に集まってしまわないように考えるのです。
現実的には、18ホールを3ホール単位の6つに分割し、それぞれの単位でのパーの
合計が偏らない事と距離の合計を検討する事によって、コースの骨格を判断
するのが一般的です。

例えば6600ヤード、パー72のコースでは6等分したパーの合計は12、距離の合計は
1100ヤードですが、実際のスコアーカードでは距離の合計の割にパーの合計が
少ない場所も見つかるでしょう。
それらを吟味する事でコースへの理解がより明確になるはずです。
読者の皆さんもコースのスコアーカードを6分割してパーの合計と距離の
合計を計算し、ご自分のスコアーと比べてみてください。きっと新しい発見が
あると思います。

さて先程、朝夕の日射による制約をお話しましたが、逆説的に非日常的な
風景を創出する事も可能です。
陽が斜めから当たる終盤のホールや朝露にぬれたスタートホールは特に
印象深く、朝と夕方はコースが一番美しく見える時間帯でもあるのです。
設計家によってはパー3で逆光を利用した演出を好んで使う人もいますが、
難しいパー3は渋滞の原因になりますから、スタート直後のパー3はご法度です。
今年の夏は是非、早朝プレーと薄暮プレーに挑戦してみてください。