株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 月刊ゴルフメイト誌 2003年6月号                 出版社:丸善
  「迫田耕のアカデミック講座」(連載第7回)

ゴルフ場の服装について
 この季節、ゴルフ場での服装の事でよく質問を受けるので、この機会にまとめて話しておきましょう。
 英国の名門倶楽部での話を最初に
書くと、クラブ規約の中に服装規定
(ドレスコードといいます)があり、プレー中の服装やハウス内での装いを制限している所が多いようです。
参考までに面白く感じたものを列挙すると、破れていたりツギ当てのある衣服
の禁止。ズボンにはきちんと折り目がついている事が望ましい。紐の付いた靴
を推薦する(通称スリップオンは物臭者の靴)。コースでは赤い色の着用義務
があるが、ハウス内では逆に赤い衣服は禁止。など、笑っては失礼ですが、
其々の倶楽部の苦労の跡が感じられます。
基本的には英国の名門倶楽部では、会員やそのゲストは資産階級の紳士ですから、
労働者階級の仕事着であるブルージーンズやTシャツは無論のこと、スニーカー
やトレーナー等は、暗黙の内に否定されてきました。
ハウス内では上着とネクタイ着用が当たり前で、大声を張り上げるなど無作法
な行動をとる人は、紹介者も含めて除名処分にされます。
一方で中産階級向けの、もっと庶民的なプライベート倶楽部では、斬新な服装
や友人を称える為の奔放な行為も、ある程度までは寛容です。
さらに、パブリックコースでは米国と同じで、他人に迷惑を掛けない範囲ならば、
自由裁量の範囲が大きく、Tシャツ、短パンにスニーカーでも一向に構いません。
つまり、未だに階級意識が色濃く残っている英国の場合は、服装規定も簡単な
原則で済むようです。
米国や日本の場合、階級そのものが残っていませんし、日本の場合は特に、
パブリックコースが少ないので、ゴルフ場の理事会が欧米の中流以上のスタイルを
範とする所が多いようです。ところが倶楽部の入会規定に国籍条項などが
あった場合、自己矛盾を起こしている訳ですから、これも別の意味でおかしな話です。

さてゴルフをするのにポロシャツを着ている方が殆どだと思います。
ゴルファーは、ポロシャツ着るようになるまでは、普通のワイシャツにネク
タイでプレーしていました。
ポロのプレーヤーは、沢山の馬を所有していなければなりませんから、当時の
ゴルファーより上流階級のスポーツと認知されており、せめて服装だけでも
あやかりたいと、先人達が着始めたのが真相のようです。
逆に、ラグビー用のラガーシャツは、汗臭いというイメージがあるためか、
ゴルフウエアーとしては拒否される場合が多いようですが、相違点は襟が
編み物(ニット織)か、織物(平織り)で区別されるようです。
 また、ズボンではポケットが生地の内側についている(内ポケット)か、
ジーンズのように生地の外側に縫い付けてある(外ポケット)かによって、
ゴルフ用として認められるか否かを判定しているようです。

暑い季節になると必ず短パンとハイソックスの事が話題になりますが、この
スタイルの起源は、19世紀のビクトリア女王時代までに遡ります。
当時、インドに駐屯していた大英帝国陸軍はスコットランド出身者が多く、
軍隊としての規律と極暑との妥協点として、短パンとスコットランドの
伝統衣装にヒントを得たハイソックスを採用する事にしました。
それが帰還した兵士によって広められ、英国の夏のリゾートファッション
として流行し、現在に至る。
というのが定説です。
現在の英国で短パンは、名門倶楽部では禁止されている所もありますが、
中流倶楽部では市民権を得ていますし、米国の影響でハイソックスさえも
必要無くなりつつあります。

 服装の流行は時代によって変わるものですし、我々日本人は洋服に関して
守るべき伝統を持っていないのですから、ことさらに目くじらを立てる事で
はないと思うのですが、メンバーや倶楽部に対して失礼があってはいけません
特にビジターとしてプレーするときは、「金を払っている客だ!」などと
思わずに、スマートに振舞ってください。その方が、奇抜な服装をするよりも
ずっとカッコいいものです。