株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 月刊ゴルフメイト誌 2003年7月号                 出版社:丸善
  「迫田耕のアカデミック講座」(連載第8回)

ゴルフにまつわる奇妙な和製英語の話し
 遣唐使の時代から、日本は外国文化を取り入れて咀嚼するのが得意な国でした。その結果の貪欲な知識欲の賜物として、我々は沢山の文字体系を持つに至りました。
外国の友人は全ての表現を30個ほどのアルファベットだけで済ませますが、私達は2000以上もある漢字50ほどのひらがなとカタカナさらにアルファベッ
も使います。

特にカタカナは、外国語を簡単に日本語にしてしまう特効薬で、気が付けば、
意味不明な和製英語が多く出回っているようです今回はゴルフにまつわる
奇妙な和製英語の話しですが、別に欧米と同じ意味でなければならないとは
思いませんし正そうとも思いませんただその表現の違いが生まれたもっと
根本にある概念的な違いを好学のためにお伝えしたいのです。

 最初の例は英語の単語や熟語をハッショッテしまった為英語として
意味が判らなくなった物ですドラコン、ニアピン、コンペ、ハンディ、ティ
グラウンドなどですが無論読者の方々は、外人にも判る表現も当然ご存知の
事と思います。

因みに外国でのニアピンは、グリーン上の球とは限りません。
また打順も、カップから遠い順に打つのがルールブックにも書かれたマナー
ですから、ピンを抜いてグリーンの端に乗った球をプレーした後またピンを
挿して、バンカーショットをする事が良くあります。
日本の習慣は、キャディーさんの便宜を優先させた結果のようです。
これとは逆に、ホールカップのように、屋上屋を架す例もあります。
この犯人はどうも故宮本留吉プロのようですが、欧米ではホールとカップは
同時に重ねては使いませんでも随分昔のテレビ放映初期の時代の事ですから、
許してあげて下さい。

 3番目の例は、バフィーとクリークのように、名称が間違って伝わって
しまった物です。最近ではドライバーとパターを除いて、他のクラブを固有
名称で呼ぶ事が少なくなりましたが、昔はマッシ−だのニブリックだの、
全ての道具を固有名称で呼んでいました。

如何した訳か日本では4Wの事をバフィーと呼び、5Wの事をクリークと呼び
習わしていますが、欧米ではまったく逆に呼んでいました。
同じ例かどうか判りませんが、ディボットも日本では奇妙な使い方をされて
いるようです本来はアイアンクラブなどで削り取られた芝土そのものの事を
ディボットと言いますからえぐれた地面や芝面はディボット跡と呼ぶべきです。
つまり、ディボットに入ってしまったと表現するのは間違いです。

同様に、ロングホール、ミドルホール、ショートホールという単語は、必ず
しもパー5、パー4パー3と同値ではありません確かに距離の長いホールは
パー5になりやすく、短いとパー3にはなりますが、ミドルホールとはあまり
言いません。

 最後に登場するのは、パッティングでよく使われるスライスラインや
フックラインの話ですこの造語は、ひょっとしたら日本文化を象徴するよう
大発明かもしれないと良く思うのですが、残念な事に、欧米人のゴルファー
にはまったく理解できない表現です。

彼らはいつも左から右とか、右から左に曲がるとか表現します。
彼らに言わせると、球を打つ動作が間違っていたために右に曲がるのをスライス
ボールと呼ぶのは正しい。しかし、真直ぐ打ったにもかかわらず右に曲がりながら
転がってゆくのをスライスと表現するのはおかしい主張して譲りません。

本来スライスという言葉は薄くそぎ取るように切るという意味で人間の行為
や行動を表しています。それが転じてゴルフスィングが未熟でカットボール
しか打てない人の球をスライスと呼ぶようになったのだそうです。
つまり、人為的なミスではないのに、地形などの副次的な原因によって球の
行方が左右される場合、人間の行動様式から派生してきた単語で表すのは
可笑しいと言うのです。

なんだか哲学的な問題に発展しそうですが、納得して頂けましたか?