来年こそはホール・イン・ワンという訳で、幸運にもホールインワンしてから慌てなくても済むように、今回は欧米でのお祝いの仕方から紹介する事にしましょう。
英国ではゴルファー用のホールインワン保険という物はありません。
しかし、一生に何度もあることではありませんから、お祭り騒ぎになることは
何処の国でも同じです。ホールインワンを達成した人は、コースから戻って
来ると、同伴競技者にクラブハウスのバーで飲み物を奢るのが普通です。
余裕のある人は大きなシャンペンのボトルを注文するでしょうし、呑み助は
普段あまり飲まないような高級ウイスキーを開け、バーに居る全員に振舞ったり
もします。ご馳走になった方も達成者の席に来て、その時の状況や気分を聞き
たいでしょうし、飲み物の賛辞と達成者の栄誉を称えるのが礼儀ですから、
クラブハウスの中は蜂の巣を突ついたよな騒ぎになります。そのうちの誰かが
家族にも連絡し、奥さんや子供まで現われ、倶楽部の支配人からも飲み物が
振舞われる場合もあるようです。
さて、ホールインワンを達成した人の当日の支払い金額ですが、最初の一杯を
皆に振舞った分を清算するのは当然です。しかし、その後は振舞われた方が
次々と返杯をしますので、自分や家族の分も含めて二万円もあれば足りる事が
多いようです。つまりその日、倶楽部のバーに居合わせた人達が、其々一杯分
だけホールインワン達成者にご馳走し祝福する事で、全員が楽しくその夕刻を
過ごせる事になるのです。更に、全員が一杯づつ余分に注文する訳ですから、
合計するとバーの売上は普通の日の倍以上になり、倶楽部側も大喜びです。
日本では場所や日を改めてパーティーをしたり、贈り物を大量に送ったり、
中にはコースの中に記念植樹しようとする人まで居るそうですが、感激が覚め
やらぬその日の内に、心尽くしのお祝いをした方が、皆に喜ばれるように思い
ます。はっきり言って、記念植樹はコースの植栽計画を無視して行われますから、
倶楽部側から見れば迷惑です。
最初に英国ではホールインワン保険は無いと書きましたが、これは個人
ゴルファー用の話です。企業向けには特別に裏側で存在しています。ゴルフ
倶楽部はちゃんとこれに加入しており、ホールインワン達成者やパーティー参加者
に倶楽部側から振舞われた飲み物は、総てここから拠出されているのです。
もうお気づきだと思いますが、プロのトーナメントで、Par3毎に高額の
ホールインワン賞が掛かっている場合、英国では殆ど総てこの種の保険で
賄われているのです。200万円の支払い金額に対し、数万円の保険料だそうですが、
企業の広告宣伝効果を考えると破格に安く、副賞専門の市場もあるそうです。
さて、プロのトーナメントの話が出ましたので、表彰式の事についても触れて
おきたいと思います。帰国してテレビのゴルフ番組を見ていてとても奇異に
感じたのですが、日本では、主催者が優勝選手に賞金を渡す時、先に賞金を渡して
から後で握手をする習慣があるようです。欧米では全く逆で、必ず握手が先で
賞金や賞品は後で渡します。「アラジンと魔法のランプ」の話を思い出したの
ですが、品物が先か手を差し出すほうが先かと聞かれれば、無論答えは決まって
いるはずです。さらに授与者の方も、「賞品を渡したから握手してくれ」という
ように感じられ、卑屈な感じがします。日本の場合、握手という文化を導入する
までは、お辞儀をする習慣があり、今では双方を併用しているので問題が複雑に
なってしまったようですが、西欧式に振舞おうとしているゴルフトーナメントの
表彰式には、似つかわしくない光景に思えます。
プロのトーナメントの場合だけではなく、プライベートコンペティションの
成績発表でも、事情は全く同じ事ですから、読者の皆さんが次回優勝した時まで、
ちゃんと覚えておいてくださいネ。
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