株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 月刊ゴルフメイト誌 2004年1月号                出版社:丸善
  「迫田耕のアカデミック講座」(連載第14回)

新ルールについての話題
 国際的なゴルフ規則はオリンピックと同じ年、つまり四年に一度改定されるのが慣例です今回はR&AとUSGA
中心になって纏められた新ルールについての話題です。ただ、仔細な変更点を列挙しても煩雑なだけですから、主要変更点を掻い摘んで、プレーヤーが遭遇する順番に解説していきましょう。
 まず、トランポリン効果で揺れる用具の規制ですが、パターを除く全ての
クラの長さの上限が48インチにウッドクラブのヘッドの大きさは470ccまでに
規制されました。寸法で示すと、ヒールからトーまで(フェース長)が127mm以下、
ソールからクラウンまで(フェース厚)が71mm以下に規制されましたから今後の
ドライバーは新素材も含め、ぎりぎりの技術開発競争になっていく事でしょう。
 ティインググラウンドに関係する事ではティの長さがほぼ100mmまでに
しかも2本重ねで使用する事ができなくなりましたまた球の動きに影響を
与えかねない物や、プレー方向を示すように設計されたものは違反ティに
なります

 スルーザグリーンに関係した事項では、競技の条件の中にキャディの使用を
禁止する裁量権が委員会に与えられましたし、救済を受けようとする場合
ニヤレストポイントの定め方も、誤所からのプレーと諸刃の剣ですが変更
されましたまた紛失球やアンプレヤブルの処置が、プレーの実情に沿った
方法も認められるようになり例えば球をロストしたものと早めに諦めて
第二打地点まで引き返して打ちなおす場合、これまでは別な球をドロップした
時点で初めの球は紛失球になっていましたが今回からはドロップした球を
ストロークした時点で初めの球が紛失球になる事に改められました。
つまり、次の球をドロップしたとしても、球を捜し始めて五分以内であれば
同伴競技者等が探してくれた初めの球をプレーし続ける事ができるように
なったのです。
 他には、プリファードライやウインタールールも初めてジェネラルルールと
して認められ、ローカルルールから格上げされました。
 グリーン周りでは、近年のグリーン形状が多様化してきた事を受け救済を
受けられる介在物が「固定スプリンクラーヘッド」だけでなく「動かせない障害物」
まで広げられましたしグリーン上のルースインペディメントを取り除く方法も、
押し付けるような事さえしなければどのような方法でも許されるように変更
されました。

 さて、2004年のルール改定で一番大きく変わったのは、ルールブック冒頭の
エチケットの項目です文章量も倍増し幅広く具体的にガイダンスが示されて
います例えば携帯電話等が他のプレーヤーの邪魔にならないようにすべきだ。
とか、スコアーの確認や記入は次のティに向かうホール間で行う。とか、
グリーン上で他プレーヤーのパットのラインに自分の影がかからないように
配慮すべきだとかゴルフメイトの読者ならば当たり前の事として認識されて
いるエチケットが、あらためて明文化されています。もう少し読み進むと例え
怒ったりしてもクラブヘッドを地面に叩きつけてはいけないとかパターヘッ
でカップの中のボールを取り出すべきではないなど、殆ど暴力行為と思われる
事にまで言及して、無謀なプレーヤーを諌めています。
 コースのスタッフまで含めた安全の確認や前の組と間隔を空けずに迅速に
プレーする責任など、ゴルファーならコースデビューする以前に先輩に教わって
きたはずの、当たり前の事まで書かれています。つまり世界的にゴルファーが
急速に増え、これまでの良識に頼るやり方だけでは、エチケットの乱れに対応
できなくなってきたのです。そして終にエチケットの度重なる違反者に対して、
懲罰的な措置が取られる事になりました。意図的に他のプレーヤーの気をそらす
ような事や、怒らせるような事をするなど、エチケットの重大な違反があれば、
委員会はプレーヤーを競技失格とする可能性さえ示唆されたのです。