株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
ホーム
プロフィール
掲載原稿・講演会
週刊コラム
出版物
連絡先
トップページ
 月刊ゴルフメイト誌 2004年2月号                出版社:丸善
  「迫田耕のアカデミック講座」(連載第15回)

米国のゴルフについての話題
 昨年の暮れに久しぶりに米国西海岸に行く機会があったので、今回は米国のゴルフについての話題です。
コースの数から言えば、米国は3万弱ある世界中のゴルフコースの、6割近くを占める巨大ゴルフ大国です。
それに較べれば、ゴルフの発祥地の英国が約3000コースですから約1割、欧州全体を合計しても全体の2割しかコースは
ありません。

ところで、日本は2400コース余ですから、フランスやドイツを大きく引き離し
世界第3位のコース数を誇っています。日本人の控えめな性質からか、服装も
用具も欧米の模倣に走りがちですが、もっと自信を持ってもよいように思います。
さて、今回は総合スポーツメーカー、ナイキの新製品イグナイトの試打会が
ロス・アンジェルス近郊であり、それに参加するのが目的でした。
ナイキはゴルフでは新興メーカーですが、バスケットや他のスポーツでは既に
相当な実績があり、タイガー・ウッズと契約しているので、アスリート路線には
自信を持っています。新製品の発表会場や試打会にもデビット・デュバル
はじめグレース・パクや深堀圭一郎なども出席し、とても華やかな雰囲気でした。
前回お伝えした新ルールで、ドライバーの体積が470ccまでに規制されたと
書きましたが、これは厳密に460ccで、測定誤差許容範囲9ccを合計しての
数値です。
ナイキではいち早く新ルール上限の460ccモデルを登場させ、米国記者たちの
関心を集めていました。
ところで、グーセンなど体力のある外国人ツアープロのドライバースペックを
聞くと、我々が使っている物と大して変わりない10度から11度のロフトで
深堀プロの使う9度以下と大きな違いがありました。

次に訪問したのは、ロス・アンジェルスから飛行機で1時間ほどのアリゾナ州の
州都フェニックスです。カーステン・ソルハイム氏の創設したピン社はここに
本社を置き、世界中にクラブを輸出しています。
 ピンのクラブは、パターとアイアンセットが有名ですが、
両方とも革新的な
アイデアに満ちています。

66年発表のアンサーモデルでは、6つの独創が盛り込まれていました。

1.周辺重量配分と低重心
2.独特のネック形状
3.精密鋳造製法
4.タンブリング仕上げ工法
5.鋼球によるヘッド固定方法
6.ソールのスクープ角度

また、アイアンセットでは他社の4度刻みのロフト構成と異なるので、買い替えた
時飛びすぎて戸惑う場合もあるようです。日本では工業製品然とした形からか、
量販店で既製品が売られている事が普通ですが米国本土ではほとんどが
オーダーメード製品だそうです。

 最後に訪問したのは隣町のスコッツデールで、フェニックスオープンを
開催するTPC(トーナメント・プレーヤーズ・クラブ)のリゾートクラブを取材
してきました。
2人乗りカートには、コースガイドや冷たい飲み物なども完備され、日本では
全く経験のないような巨大なマウンドと池を配した、人工美あふれたコースの
プレーフィーは200ドル。
米国人の考える究極のゴルフバカンスの値段としては、妥当なものです。
欧州のゴルフに慣れ親しんだ人間でも、スコットランドばかりではなく何年かに
一回は来たいと思いました。
ところでこのコースの芝は日本の高麗芝と同じで、冬に枯れてしまう
バーミューダグラスという種類の芝を全面的に使っています。しかし冬場は、
ライグラスという常緑の芝をオーバーシードし、さらにバンカーの淵などに
柄をつけていて、とても美しく管理されています。
一般的な日本のコースでは、芝の枯れた冬場はフェアウエーよりもラフの方が、
球が浮いていて打ちやすいという不条理があります。せっかく真直ぐな球を
打ってフェアウエーを捕らえたのに、ラフまで曲げてしまった人よりも次打が
打ち難くなるのは理不尽です。
碧い芝環境は目にも鮮やかですから、日本にも導入したい管理技術です。

Photo by.三木崇徳(Miki Takanori)