株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 月刊ゴルフメイト誌 2004年6月号                出版社:丸善
  「迫田耕のアカデミック講座」(連載第19回)

ゴルフ写真の話
今回は少し趣向を変えて、今まであまり話題にならなかったゴルフ写真の話です。近年、新聞や雑誌の紙面におけるグラフィックの割合が極端に多くなってきました。
カメラの高性能化に伴い、誰でも手軽に写せ、しかも初歩的なミス(ピンボケや手振れ、露出の間違いなど)が減ってきたからだと思います。
更に、銀塩写真からデジタル写真に移行するにつれ、加工が簡単運搬時間が
少なくなりました。例えば、海外で取った写真をすぐに携帯電話を通して日本に
配信するような事までできるようになったのです。
新聞社の写真部などはこの技術革新のおかげもあって、随分と速報性にとんだ
美しいカラー写真の掲載量が増えたようです。でも、基本操作やカメラマンが
守るべき倫理姿勢などは変わりませんから、まずはその事からお話しましょう。

数年前のタイガーウッズ選手の年間グランドスラムが掛かっていた全英
オープンで、事件は起きました。本戦前から人種を超えた世紀のドラマを報道
しようと、プロゴルフツアーを取材しなれたゴルフ関係メディアだけでなく、
世界中の報道機関から特派員記者とカメラマンが現地に送り込まれ、過激な
取材合戦を繰り広げていました。

さて本戦初日のタイガーウッズ選手の第1打目は、明らかにタイミングが
ずれて、右の深いラフに捕まってしまいました。2打もひどいミスだったの
ですが、スィングが終わるや否や、彼は後方にいたカメラマンに向かって
彼にしては珍しく文句を言ったのです。『君は先ほどもスイング途中にシャッター
を切って私の邪魔をしたが、今回も同じ事をした。』タイガーウッズに指を
指されて注意されたカメラマンはその場で取り押さえられプレスカードを剥奪
されて場外退去処分になったのですそのカメラマンは日本の某新聞社の
派遣
カメラマンだったのです。タウッズ自身も試合中に声を荒げて他人
を叱咤してしまった自分を責め、彼本来の自信に満ち溢れたプレーをできずに
ズルズルとボギを重ねて優勝を逃してしまいました。この事は日本では殆ど
報道されませんでしたし
その後取材陣の行動規範を見直したという話も聞きま
せん
日本の報道各社同業者を庇う事で自分たちのマナーの悪さを隠匿
しようとしたのです。

私は今でもタイガーウッズの年間グランドスラム彼の言葉を借りればマイ
ノリティーの偉業を阻害したのは心無い日本のメデアだったと確信しています。
と言う訳で、カメラを構える前に覚えておくことは次の二点です。
1.肖像権の遵守 被写体になる人や物、関係機関の了解を得る事
2.時と場合の判断 職業写真家の場合ならゴルフコース内にカメラを持ち込む
 ことは許されていますが、プレーの邪魔になる行為はしてはなりません
 またスイング中は、インパクト以降にしかシャッターを押してはなりません。

さて、ゴルフ写真の分野は用途によって多岐にわたります。ゴルフ場開発では
航空写真や衛星写真場合によっては赤外線を使った植生調査なども行うことが
あります新聞や雑誌などでは、望遠レンズを使ってプレーヤーの顔写真を多く
使いまレンダーやコース紹介などではクラブハウスの建築写真や集合写真、
大型カメラを使った空気感を重視した映像を見ます。これらの中で、読者の
皆さんに有益だろうと思われることを、幾つかお伝えしておきましょう。

まずフィルムですがモノクロとカラーの違いがあることはご存知度と思いますが、
プリントに適したネガティブフィルムとスライドに適したポジフィルムがあり、
印刷用の原稿は殆どがポジフィルムですので、雑誌などに投稿する目的で写真を
撮られる方はこちらを選ぶと良いと思います。フィルムのサイズですが通称35mm
と呼ばれるものを使う場合が多いと思います。このフィルムは元々映画用の
フィルムの転用で、倍のサイズの70mmが一般の映画館などで使われ、半分の16mm
や4/1の8mmがアマチュア用の映写機に使われていました。大戦前のドイツで、
この映画用のフィルムに目をつけたライカ社が、携帯用のカメラを作り始めた
のでフィルム自体をライカサイズと呼ぶこともありますそれ以前のカメラは、
ブローニーサイズと呼ばれる60mm幅のロールフィルムか4×5や8×10と呼ばれる
シートの大きなサイズしかなくカメラが随分と小型化され戸外での撮影容易
になりました。
最近はフィルムの性能が飛躍的に向上し、35oカメラで雑誌の
見開きページを撮影する事フラッシュを使わずにクラブハウス内を撮影
できる程になりました。

次にレンズですが35oカメラで換算すると85oぐらいの中望遠レンズがィー
インググラウンドからパー3ホールの全景を撮るのに都合が良いようです。この
画角は25度近辺で、人間が対象を凝視した時の視野に近く、女性のポートレート
どに多用されるレンズでもありますまたパー3に限らず、ティーイング
グラウンドからバンカーや池などのハザードの様子が良く判りますので旅先での
ゴルフの思い出にも好都合のようです報道カメラマン達が良く使うのは300o
か400oの明るい長望遠レンズです最近は自動焦点技術に加えカメラぶれ防止
装置付のレンズが人気のようです。彼らはプレーヤーの表情を撮影しますので、
三脚を設置するヒマがありません殆どの人が一脚を付けたレンズを肩に担いで、
コース中を走り回っています。撮影機材は合計すると30kg以上になる事も珍しく
ありませんからっとするとプレーヤーよりも体力を使う職種かもしれません。

カレンダーなどを専門に撮るカメラマンも存在します。彼らは6×7以上の大判
カメラを、キチンと三脚に固定して使うのが一般的で材も大掛かりになります
から、乗用カートを準備する場合が多いようです。1つのアングルから露出
ずらし複数枚撮影しその中から1枚だけを選ぶのが常識なほど写真の出来具合
にはシビアです以前にもお伝えしたようにコースが美しく撮れる時間帯は朝方
と夕方のわずかな時間だけですので、時間的な制約から彼らも大変な働き者です。
 
最後に最近使用者が増えてきたデジタル写真の事にもふれておきましょう。
カメラ技術の飛躍的な進歩に伴って今や銀塩写真との解像度での格差はありま
せんただ職業カメラマンに言わせると、デジタル写真は柔らかい描写が未だに
苦手らしく、現在の段階では銀塩写真作品作りには向いているとの
ことでした。