株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 月刊ゴルフメイト誌 2004年12月号                出版社:丸善
  「迫田耕のアカデミック講座」(連載第25回)

エチケットとマナーの違い

今回は「来年から心機一転ゴルフに打ち込むぞ!」と意気込んでいる読者のために、私の考えるゴルフの一般的な基本原則の一部をお伝えしようと思います。

初めにゴルフメイト紙上で度々話題になるマナーの話から話を起こしましょう。

「エチケットとマナーの違いは何でしょうか?」更に「マナー違反をした場合の
罰則はあるのでしょうか?」「そもそもマナーとは何でしょうか?」
答えは簡単ではありませんが、財団法人日本ゴルフ協会(JGA)の役員に聞いた
ところ、次のような答えが返ってきました。

「ルールブックにはエチケットについて述べた箇所は沢山あるのですが、マナー
という表現は全く使っていません一般的に見てゴルフプレー中の事はエチケ
として理解しそれ以外の場所例えばクラブハウス内での事や服装等ではマナー
という表現が使われているようです。直近のルール改訂で、度重なるエチケット
違反をするプレーヤーに対しては罰則が科せられる可能性ができましたがマナー
違反についてはゴルフルールにその言葉の規定が無いわけですから当然罰則など
ありません。」

つまりマナーという言葉は、厳密な意味でのゴルフ用語としてではなく、もっと
広義の日常生活上の行動規範として使われているようです。

さて、ゴルフルールに書かれているエチケットについては、読者の皆さんが各自
ルブックを読まれるように期待するとしてマナーに関しての私自身の考え
方を述べておきたいと思いますこんな事を書くのはとても複雑な心境なのですが、
マナーという一般常識に基づいた行動規範は、現在の日本のゴルフ環境下では
殆ど意味を持たないように感じています。

この事は服装を例にとって説明すると判りすいので英国での服装規定(ドレス
コード)と比較しながらお話しましょう。ゴルフに限らずわが国が英国か取り
入れたマナーは多いのですが、その根底には英国の階級社会の影響が無視でき
ません

英国のプライベート倶楽部においては倶楽部メンバーはもとよりメンバー同伴で
プレーするゲストもその倶楽部特有のしきたりにそった行動が求められます。
特にゲストは同伴してくださるメンバーに敬意を払ってまたメンバーが他の
メンバーから無作法なゲストを連れてきたと叱責されない為にとても気を使います。

服装においても、大概の場合ゲストはジャケットとネクタイの着用が基本です。
この組み合わせは英国では少しあらたまった席での標準解で、ブド&バター
同じように切り離すことはできません。日本のゴルフ場で通常求められている
ジャケットのみの着用は英国流に言えばカジュアルなお洒落着という位置付けで、
ゲストにリラックスしてもらいたいメンバーが着るならともかく、ゲストが率先
して着るべき物ではないと考えられています。

一方日本ではご存知のようにとても暑い国ですし、ゴルファーの大半がメンバーズ
ゲストとしてゴルフ場に来ている訳でもありませんから、各ゴルフ場の服装規定
に従って着衣を決める必要があります。ところが、事前に当該倶楽部の服装規定
を伝えてくれるゴルフ場は少数派で、大半のゴルフ場はビジターだけでの予約
受け付けているのに、当日ゴルフ場に着いてから服装規定が在ることを知る場合
が多く、面食らってしまいます。

ゴルフ場側ではプレー中の服装、例えばソフトスパイクやハイソックスはプロ
ショップで販売しているのだから問題はないと考えているのかもしれませんが、
これは別の議論で疑問と噛合ていません現在一般的に流布している服装規定は、
女性達がゴルフをプレーする事を想定していなかたため女性の服装に至っては
更に不可解です。男性の服装規定をそのままスライドして対応しているに過ぎ
ません。また、ゴルフは社交的な側面ばかりでなくれっきとしたスポーツなの
ですから、服装がより動きやすく快適な形に進化してゆくのは当然に思えます。

本来服装規定は倶楽部組織が同好の士を選別するために、もしくはある意味の
身分保障として機能してきましたが、それは英国のように厳然と階級社会が存続
している場合の話で日本や米国のように国民全ての平等が保障されている国では、
基本的にその存在意義を持ちません。

本当に伝統ある倶楽部では、倶楽部組織内での内規により伝統的な服装規定を
踏襲している場合も在るのですが実体の無い格式を無理やり創るために経営陣が
勝手に服装規定を定める事はあってはなりません況やビジターとしてプレする
者が倶楽部メンバーの服装についてとやかく述べることは差し控えなければ
なりません。

しかしもし読者の良くプレーされるゴルフ場がパブリックコースならば話は別で、
利用者たる読者が率先して模範を示し、経営者に喚起を促すことも必要でしょう。
多くの日本のゴルフ場は、実質的にはセミパブリックのような経営形態をとり
ながら、表向きはプライベートメンバーズ倶楽部の看板を掲げているので問題が
複雑です。

またゴルフは社交的な側面とスポーツしての側面があることはお話しましたが、
一般的には遊興施設として捕らえられることが多く、服装規定に限らず問題を
更に複雑にしているようです考えても見てくださいディズニーランドに友達と
出かけたり、安芸の宮島にご夫婦で参詣に行かれたりする時に、ジャケットと
ネクタイが必ず必要でしょうか?多分大多数の読者の皆さんは他人に不快な
思いをさせない程度で充分だと考えられていると思いますが、ゴルフも同じです。

ゴルフは紳士のスポーツだと言われます淑女入れるべきかもしれないとは思い
ますが、この紳士という言葉をカタカナ英語にするとジェントルマンでしょうか。
的確日本語に翻訳するのが難しいのですが私が感じいるジェントルマンとは、
「衣食が足りて尚高邁な精神を持つ人だと思います更に重要なことは生まれ
ながらにして善悪の判断ができる人など居らず、全ての人は努力してその判断
基準を学び続けなければならない事なのです。倶楽部メンバーであれビジターで
あれゴルファーが等し守らなければならないマナーは次の4つに集約できると
思います。

1.最悪の場合でも1ラウンド4時間以内でプレーすること

2.自分でつけたディボット跡やピッチマークは自分で直すこと

3.同伴プレーヤーの球の行方を確認し、常に一緒に球を探すこと

4.お互いの健闘を称えあえるような関係をラウンド中に作ること

実は日本では上記の幾つかはキャディーさんに頼ることが多く、ゴルフメイトの
読者の皆さんに、私が是非とも学んで欲しいと思っている事なのです。