株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 月刊ゴルフメイト誌 2005年1月号                出版社:丸善
  「迫田耕のアカデミック講座」(連載第26回)

ピッチマークの直し方

今回はエチケットやマナーの基礎編として、ピッチマークの直し方やディボット痕の処理の仕方をお伝えしましょう。
スピンの効いた球や高い所から舞い降りてくる球がグリーンに着地するとその衝撃でグリーンの芝土が抉れてしまいます。この部分を通称ピッチマークと呼んでいますが、本来の意味からするとグリーン上だけに限りまりません。

グリーンを取り囲んでいるカラーの部分やアプローチの着弾点であるエプロンの
部分にも多数見受けられランニングアプローチの支障になることはご存知の通り
ですこの芝土が凹んだり捲れ上がってしまった状態をそのまま放置すると、パッ
のライン上に不陸が在る訳ですから著しくパッティングクォリティーが下がり
ます。また、グリーンの芝もその部分が傷んで病害に犯されやすくなりますし、
最悪の場合はその部分が枯れてしまいグリーンのいたる所に10円玉ぐらいの斑が
できます。このようにならない為にはピッチマークができた直後に小まめに補修する
事しかなく自分の球が作ったピッチマークをその場で直す事は、ゴルファー全てに
課せられた当然の義務なのです。

さて、ピッチマークの直し方をお伝えする前に是非覚えておいて頂きたい事は
グリーンフォークの使い方です。

「ピッチマークを直す」ということは、地面の凹んだ場所を元通りに直すことで
あってお庭の雑草を穿り返して根こそぎ抜いてしまう時とはフォークの使い方が
違います雑草を抜く場合根が残っているとそこから雑草がまた発芽してしまう
ので、文字通り根こそぎ抜いてしまうことが大切です。この場合、フォーク(ゴルフ
用も雑草抜き用も食事に使う物も大きさが違いますが同じ構造です)を地面に突き
刺して抉るように先端を持ち上げ雑草の根全体を地面から持ち上げるようにする
のがコツです。しかし、ゴルフのピッチマークの補修方法は、雑草抜きとは全く
違った方法で行わなければなりません。芝の根を傷めないように注意しながら
地面の不陸を直すことが目的だからです。

それでは正しいピッチマークの直し方を説明したいと思いますピッチマークは
大概の場合、打球が飛んできた方向の反対側が盛り上がっています。飛んできた
球の勢いで芝土の表面が横にずれて捲れてまったものですがこの部分の芝の根
を切ってしまわないように注意しながら地面を元に戻す必要があります。

いきなり凹んでいる部分を直そうと思っても芝土がピッチマクの周辺に偏って
いるわけですから上手くいきません。凹んだ部分を直す前に、その周辺の芝土を
ピッチマークができる前の常態まで押し寄芝生の表面だけでなく深さ数cmの
範囲まで元通りにする必要がありますということはピッチマークの周辺の球が
飛んできた方向の反対側を中心に数回フォークを突き刺し、芝土全体を押し戻す
ようにするのが正しい使い方です。

この場合必ずグリーンフォークを使用しなければならないとは思いません厳密に
言えば、雑菌などを持ち込まないようにゴルフ専用の物が望ましいのですが
ティーペグ等で代用しても構いません大切な事はグリーンにできた傷が乾いて
風化する前に補修することです。

さて、ピッチマークの周辺にできた過度に圧密された芝土がほぐれ元に戻ったら、
今度は本来のピッチマークの処理です。30mもの上空から落ちてきた球は、地面の
垂直方向にも激しい衝撃を与えています。フォークを使って表面の芝を元あった
位置に押し戻すと同時に地中数cmまで数回フォークを突き刺して芝土もちゃんと
ほぐしておきましょう。

スピンの効いた球を打った時やグリーンが柔らかい時など、ピッチマークから
数十cmぐらい離れた所に芝土の表面が弾け飛んでいる場合もありますピッチ
マーク補修の最終段階は、その弾け飛んだ部分を元に戻し、パターの底を使って
軽くトントンと均す作業です。

足の裏でも簡易的には直せるのですが、スパイクシューズや凹凸の激しい最近の
靴底では、余り綺麗には治せないのも事実です。ピッチマーク自体は500円玉
程度の大きさですが上手く補修されたピッチマークは100円玉ぐらいの大きさに
なり周りより少し濃い色になりますが滑らかな転がりが持続しパッティングの
支障にはなりません。

文章にすると大変な作業のように感じられるかもしれませんが実際はピッチマーク
の周辺を5.6回突き刺、ピッチマーク本体を3.4回突き刺すだけですから、パターで
均す時間を含めてもホンの数秒ですしかもピッチマークを補修するという事は
望外の情報をプレーヤーに与えます。

ピッチマークと球の止まった位置関係を吟味する事によりリーンの硬さや傾斜
判りますし自分の打った球のスピン量まで想像できますだからトーナ
プレーヤーリーン上の自分の球のマークをする前に必ず自分の付けたピッチ
マークを直し、グリーンの基本状態を頭に叩き込んだ上で、実際のパッティング
ラインを読むのです。

さて次はボット痕の処理です前にもお伝えしましたがディボッそのもの
はアイアンクラブなどでり取られ、飛び散った芝土(ターフ)を指し、抉られた
部分はディボット痕と呼んでいます。この事からも判るとおり最も基本的なディ
ボット痕の保補修方法は飛び散ってしまったディボットをそっくりそのまま
元あった位置に戻すことです。

テレビで見る外国のトーナメントでプレーヤーがショートアイアンを使うたびに
草鞋のようなターフが飛び、キャディーがそれを拾って元に戻す光景をご覧に
なった読者も多いと思いますがあの行為が西欧では標準的なデト痕の補修
方法です。

日本ではフェアエーに洋芝の代用品として高麗芝などを使う場合が多く、これらの
芝は匍匐系と呼ばれる地下茎が発達しているため、アイアンクラブなどで削り
取るとバラバラになって飛び散り、復元することが困難なために問題が複雑
なってしまいましたが、基本的には飛び散ったターフを拾い集めて元の位置に
戻す事がピッチマークの処理と同じようにプレーヤー全員に課せられた義務だと
思います。

一度削り取られてしまった芝土は幾ら元に戻しても活着することは稀なのですが、
その下から生えてくる新芽を保湿し、保護する役目を持っています。という訳で、
理想的なディボット痕の補修方法は、削り取られた場所に芝の種を含んだ砂を
撒き、その上からターフを被せておく事ですが、くのゴルフではただの砂で
削られた場所を埋める事でお茶を濁しているのが現状です。

私個人は小さなバンカーが無数に点在するフェアウエーが良いとは思えませんし、
砂がこびり付いた球を打つと、何処に飛んでゆくか予測が困難なので嫌いですが、
高麗芝を使う限り仕方のない事でしょう。

フェアウエーの事ばかり述べましたが、最後にラフやティーインググラウンドの
ディボット痕の処理もお伝えしましょう。フェアウエーは良いショットの御褒美
として打ちやすい環境を準備してあげるのが本則ですが、ラフに関しは逆に打ち
難くする事が公正の原理から必要です。ですからグリーンキーパーではないプレー
ヤーの立場から見るとラフにできたディボット痕はそのまま放置しても構わない
と考えています。

逆にPar3ホールのティーインググラウンドなどでは、フェアウエーと違った芝種
や肥料構成になている場合も在るのでフェアウエーに使うの同じ目砂を撒く
ことは感心しません必ずティーインググラウンドに備え付けの目砂を使うように
してください。

ゴルフメイトの読者の皆さんが率先して目砂袋を持ち、トーナメントプレーヤー
よりも上手にピッチマークを直せるなんて、考えただけでもワクワクしてくる
光景です。