株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2003年1月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第1回
 
現在の日本におけるコース管理者の立場  

 新連載を始めるに当り日本のコース管理者がどのような立場にいるか欧米と比較してその違いについての疑問点を述べておきたい。
 日本でも欧米でもグリーンキーパーの所属する組織は、各ゴルフ倶楽部と地域のグリーンキーパー協会という場合が多いと思う違うのは欧米の倶楽部
組織内での地位は日本より相対的に高く、意見を述べる機会も
それだけ多いということだろうそのためか理事や支配人また部下に対しても
説得力のある説明が求められ、答えも常に複数用意していなければならないが、
逆に相手に対して説明を求める事も多く納得した上で職務に邁進することが
普通である。

ゴルフコースの管理は、自然と向き合いながら広大な面積を相手にするので、
土壌や植物、気象や生物などといった科学的な知識も必要だし、管理機材や
プレーヤーの希求水準は毎年のように高くなる。当然すべての知識をキーパー
1人で網羅する事など不可能で、多くの分野で専門家のアドバイスを受ける
ことが多いよく使われるのは排水設計の技術者と芝種選定の専門家で彼らの
仕事を見ていると土質や管理方法を加味した上で実に綿密にそのコースに合った
安価な方法を提案してくる。しかも報酬はリーズナブルだし、その判断過程を
後進にも公開すれば彼らの教育費も浮き、管理サイドの意思統一も図れるので
一石二鳥なのだ。

地域のグリーンキーパー協会の会合でも、何処の設計事務所の排水技術者は
優秀だとか、あそこの種子メーカーの発芽率は良くないとかいった情報交換が
盛んに雄かなわれていて、随分と盛り上がるようだ。

 振り返って日本では、管理予算を含めて管理内容を経営者側に押しきられる
事が多いわりに、会社や倶楽部の顧客減少による収入減は自然現象のようには
ぐらかされる事が多い。キーパー自身の興味も自コースの自慢話か他コースの
管理方法を取り入れる算段に終始しがちで、その集合体である地域の協会も
親睦会の域を出ていないように感じる。 また専門性を持った技術者の分化が
進んでおらず、各メーカーやゼネコンがその代替機関となっている場合が多い。

考えてみればすぐに判ることなのだが洗濯機などの白物家電を購入する場合に
家電メーカーの販売担当者に競合他社との比較資料を提出しろと要求しても、
有益な情報など得られるはずはないのに、ゴルフ場だけは別などと考えられる
だろうか?

日本のキーパーは自他共に会社員としてコースに関してのすべての責任を
負う役職だと思い込まされているゴルフ倶楽部程度の規模は社員数から見ても
立派な中小企業で、古い体質を引きずっているところが多く、年功序列と会社に
対する過度の忠誠心を求められる場合も多いように想像できるが、自分たちの
持つ高い専門性を積極的に生かす方法も模索すべきだと思う。またそれを
バックアップする組織作りも急務だろう。

 英国では87年創立のグリーンキーパー協会(BIGGA)が会員7千人、スポーツ
ターフ研究所(STRI)やゴルフコース建設者協会(BAGCC)などが主な研究機関だが、
米国ではUSGAグリーンセクションと75年の歴史を誇ると豪語する米国グリーン
キーパー協会(CCSAA)が会員2万人以上の会員を誇っているので、一度インター
ネットで覗いてみるとよいと思う。

どこの国でもグリーンキーパーの離職率が多く苦労しているようだが資格検定
や組織の整備によって若者の興味を繋ぎとめる一方流動化は時代の流れとして
受け入れざるを得ない状況らしい。