株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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 週刊ゴルフダイジェスト(4) 2006年8月1日  出版社:ゴルフダイジェスト社

第135回 The Open プレヴュー

今年で135回を迎える全英オープンの舞台は、イングランド中西部、リバプール近郊ホイレークの、ロイヤル・リバプール・ゴルフクラブ。
英国ゴルフ通の方は既知だろうが、ホイレークはデボンのウエストワード・ホー!と並んで、イングランドで最も初期のゴルフ倶楽部である。 当然倶楽部の歴史は古く、競馬場だった所をゴルフコースに改造したのが1869年、18ホールズに改修したのが1871年で、過去に十回もジ・オープンの開催地となっている。 しかし前回大会は1967年と約40年ぶりの開催で、理由はカヌースティー同様、地権者の同意が近年になってやっと再獲得できた為らしい。 英国著名倶楽部はどこでもそうだが、約700人のメンバーに対して膨大なウエイティングリストを抱えており、入会するのに十年以上も待つという。

さて、コース自体は基本的に百三十五年前のレイアウトだから、色々不具合が目立つが、ハンディキャップを持つ倶楽部メンバーにはラフは少し厳しいけれど楽しいコースだ。
しかし現代の世界中のゴルフツアーを転戦する猛者にとっての話は別で、7258ヤードしかない距離から見ても、風とポットバンカーと理不尽なOBラインしかない障害物から見ても、今年の全英はバーディー合戦になると思うし、多分それが何らかの飛距離制限のきっかけが欲しいR&Aの意図なのだろうと思う。

因みに、歴史的に有名なホールは13番Par3通称アルプスで、倶楽部メンバーが難しいと感じるホールは3番と14番らしいが、ドッグレッグしたフェアウエーが逆バンクしている14番はともかく、余程のアゲンストが吹かない限り3番は平易で、個人的な意見だが優勝スコアーは20アンダーを超えると思う。 ジ・オープンの約束事である風は九割方西風だから、横風を受ける海沿いの9番から14番までの攻略方法が勝敗の鍵になるだろう。

ロイヤル・リバプール・ゴルフクラブ(略称RLGC)の華々しい競技記録を紹介すると、1902年に最初の国際大会(イングランド対スコットランドというのが笑える!)開催、1921年開催のジ・オープンでは球聖ボビー・ジョーンズのグランドスラム(英米双方のアマチュアとオープン競技の覇者という意味)の舞台にもなっている。 またジョン・ボールという稀代のジェントルマンゴルファーを輩出した事でも有名だ。

昨年ミュアフィールドから召喚された34歳の若いキーパーによれば、グリーンは4.5mm(結構高い)の刈高で、スティンプメーターで11.5フィート(3.5m)の速さを目標にしており、総勢10人のスタッフと共に低コストでエコロジカルなコース管理を目指して奮戦中との事だった。 彼が生まれ育ったスコットランドとの気象条件の違いや、経験不足は否めないが、暖かい眼で見てあげたい。