|
|
|
月刊 ゴルフ場セミナー 2003年6月号 |
発行:ゴルフダイジェスト社 |
|
連載コラム グローバル・アイ 第6回 |
|
|
|
|
先月号の最後で、冬場に枯れてしまい
フェアウエーより簡単になってしまうラフの不合理について書いたが、
心配になり、たまたま別件でJGAに
行ったついでに聞いてみた。公式のコメントではないのだが、JGAの立場が良く理解できる内容だったので紹介する。
「JGA主催の競技会は芝の枯れていない時期にしか開催しませんし、コースレート
もその時期に合わせて算定しています。ですから冬場のラフに関しては、現在は
特に問題視していません。」という事だった。
JGAはR&AやUSGAと違い、構成メンバーは個人のゴルファーではなく日本全国の
2000余りのゴルフ場である。構成メンバーであるゴルフ場の芝種や管理に関して
JGAが口を出すのは好ましくないとの判断だと思ったのだが、各ゴルフ場が
定めてJGAが公認する公式ハンディキャップは、当然冬場にプレーしたスコアーも
含まれるから、奇妙な事に変わりはない。
ゴルフ協会なのかゴルフ場協会なのか
分からないと言い出す輩も存在するわけだ。
ところで近年、問題視されてきたのは、残念ながらラフの在り方ではなく、
2グリーンシステムの是非だろう。そこで、日本独自の2グリーンシステムが
成立した過程を考え直すことにしてみよう。戦前の古いコースは開場当時欧米に
範を採り、洋芝のグリーンにすることが多かった。
しかし日本の夏が高温多湿で
洋芝の状態が悪くなるから、その時期だけ高麗グリーンを臨時のグリーン
として使う事が考えられた。
時代が下り、ゴルフブームに支えられて開場したゴルフ場は、芝種はともかく
として、最初から2グリーンを前提に開発され、いつの間にかそれが標準解で
あるような錯覚をゴルファー及びゴルフ関係者に与えた。つまりこの時点で
キーパーも二つのグリーンを管理する事に慣れてしまったのだ。
無論、異種類の芝を同時に生育させる苦労はあるものの、基本的にグリーンの
傷みには面積増大で対処する。という既得権のような考え方が芽生えた。
その時以後、グリーン総面積は増大を続け、ゴルフの大衆化によってもたらされた
平均的ゴルファーへの便宜を図り続けたのだ。
其処に、設計者はもとより倶楽部もキーパーも、ゴルファーの中核をなす
倶楽部ゴルファーに欺瞞を働いてしまったと認識すべき点があると思う。
近年問われている2グリーンへの是非論は戦略性の観点からばかりだが、
大多数の日本のコースはグリーン周りを議論する以前に、まっとうな戦略設計が
存在する方が稀で、高邁な表現が虚しく響いている。まして長い間親しんできた
コースをズタズタにしてまで、ワングリーン化する必然性など何処にあるの
だろうか? 現代において、2グリーンより1グリーンの方が世界標準に少し近い
事は確かだが、もっと大切な要素や基準があるような気がしているのは、
私だけではないと願いたい。
さて日本独特のゴルフ環境を創出したのは、2グリーンシステムについては
井上誠一氏だろうし、大規模な土木工事については上田治氏だろう。今や神格化
されている名設計者の独創が、今になって批判されるのも時代の綾だが、
芝と管理技術の進歩を見越した設計や日々のカイゼンを怠った長年に渡る
怠慢こそが、批判されるべきだと思う。
確かな事として言えるのは、ベント芝の改良と床構造の解析が米国で進み、
1グリーンでも対応できる事が明白になった今日、次の目標は現在の半分の
面積で、年間四万ラウンドに耐えるグリーンを維持管理する技術だろう。
|
Copyright ©
2003- Quatre-Quart Co.,Ltd. All Rights Reserved. |
|
|
|
|
|