株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2003年10月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第10回
 
自然環境の影響を大きく受けるコース作り
 現代において大多数のゴルファーは街に住んでおり生活リズムも9時から5時までといったビジネスアワーに引きずられた生活をしている事が多い。ところが、ゴルフコースは自然環境の影響が大きく日の出や日没時間などの、暦に合わせたほうが都合良い事が多いようだ。

例えばスコットランドのリンクスコースが一番美しく見える時間は長く影が
伸びた日没1時間前、樹木の多い内陸コースでは、日没2時間前が最も美しい
ように感じるし、この時間帯の写真広告に使われる事も多いようだ。
倶楽部メンバーにも、この時間に16番にさしかかるようなスタート時間は
好評で、「真の黄金スタート時間」と呼ぶ人達もいる。秋分の今の季節だと
ロンドンの日没は6時なので、4時間でラウンドするとして、12時半位
スタートは混み合う事が多い。

英国でのスタート時間は、日の出から一時間後から始まる事が多く、その前に
リーンの刈り込みとカップ切りをする場合が多い。つまりグリーンキーパーは、
日の出と共に作業を開始する訳で、陽の長い夏場など、とんでもない時間に
モアを掛けるので、近隣住民から苦情がくるそうだ。そこで住宅地に隣接した
コースでは、作業開始時間を6時とし、スタート時間を7時からにする例が多い。
また同様の理由で午後6時以降は騒音の出る機械は使えず、残りの仕事は翌日
回しとなる。

 日本では日の出や日の入り時間から逆算したスタート時間の試みは、聞いた
ことが無いが、考えてみる価値はあると思う。スタッフの労働時間の問題は
在るが、もともとゴルフ場は拘束時間が長く二交代制を導入するには
中途半端な就労時間だったので改善する余地はあると思う。更に、曜日ごとの
ローテーションも組み合わせれば作業効率も上がるし休日も取りやすくなる。
早起きの得意な高齢者も多いし、できる限りのワークシェアリングは進めて
いきたいものだ。

 次の話題はスプリンクラーだが、この問題は欧州で10年程前に提起され
現在では多くのキーパーの常識として流布している。が日本では余り耳に
しない話題なので、確認のために紹介しておきたい。

個人的には欧州に比べて格段に降雨量の多い日本では散水設備より排水設備の
ほうが重要で、グリーンやフェアウエーの暗渠排水路の仕様のほうが大切だと
思っているが、これは別の機会に譲る。

 散水機メーカーの技術者が必ず話題にするのは均一な散水をするためには、
スプリンクラーヘッドのトライアングル配置と100%のオーバーラップ距離である
ところが、各品番固有の水量分布詳細は企業秘密らしく一般のキーパーには
手に入らなかったドイツ人の専門家が運良く手に入れて検討したところ
オーバーラップ距離が100%ではヘッド周辺が水浸しになるが75%にすれば
コストも安く、均一に散水できる事を発見したというのだ。

つまり、半径20mの散水能力を持ったヘッドの相互間距離を伸ばし25m間隔に
配置するわけで、随分な節約だ。今では、設計家も75%オーバーラップ方式を
取り入れており、米国散水機メーカーの言いなりにはならないらしい。

 実際の散水量分布は風の影響を強く受けどんなに優秀な機材を理想的に
配置しても均一には撒けない事も事実で最近は風力計と連動したコント
ローラーも開発されているという。

さて基本に立ち返り確認しておくと標準的なポップアップ式のスプリンクラー
ヘッドは、毎分150リットルの水を、半径20mの範囲に撒くから、毎時9tの雨が、
1256uの芝に降り注ぐ事になる降雨量に直すと毎時7o程だが3箇所の
スプリンクラーの水が同時にかかるような理想的な場所では、毎時20o以上の
結構強い雨と同じ事になり、全ての水分が地下に浸透できず、芝土の表面を
流れてしまう量が多くなるので、十分な注意が必要だ。