現代において、大多数のゴルファーは街に住んでおり、生活リズムも9時から5時までといった、ビジネスアワーに引きずられた生活をしている事が多い。ところが、ゴルフコースは自然環境の影響が大きく、日の出や日没時間などの、暦に合わせたほうが都合良い事が多いようだ。
例えば、スコットランドのリンクスコースが一番美しく見える時間は、長く影が
伸びた日没1時間前、樹木の多い内陸コースでは、日没2時間前が最も美しい
ように感じるし、この時間帯の写真が広告に使われる事も多いようだ。
倶楽部メンバーにも、この時間に16番にさしかかるようなスタート時間は
好評で、「真の黄金スタート時間」と呼ぶ人達もいる。秋分の今の季節だと、
ロンドンの日没は6時なので、4時間でラウンドするとして、12時半位の
スタートは混み合う事が多い。
英国でのスタート時間は、日の出から一時間後から始まる事が多く、その前に
グリーンの刈り込みとカップ切りをする場合が多い。つまりグリーンキーパーは、
日の出と共に作業を開始する訳で、陽の長い夏場など、とんでもない時間に
モアを掛けるので、近隣住民から苦情がくるそうだ。そこで住宅地に隣接した
コースでは、作業開始時間を6時とし、スタート時間を7時からにする例が多い。
また同様の理由で、午後6時以降は騒音の出る機械は使えず、残りの仕事は翌日
回しとなる。
日本では日の出や日の入り時間から逆算したスタート時間の試みは、聞いた
ことが無いが、考えてみる価値はあると思う。スタッフの労働時間の問題は
在るが、もともとゴルフ場は拘束時間が長く、二交代制を導入するには
中途半端な就労時間だったので改善する余地はあると思う。更に、曜日ごとの
ローテーションも組み合わせれば、作業効率も上がるし、休日も取りやすくなる。
早起きの得意な高齢者も多いし、できる限りのワークシェアリングは進めて
いきたいものだ。
次の話題はスプリンクラーだが、この問題は欧州で10年程前に提起され、
現在では多くのキーパーの常識として流布している。が、日本では余り耳に
しない話題なので、確認のために紹介しておきたい。
個人的には欧州に比べて格段に降雨量の多い日本では、散水設備より排水設備の
ほうが重要で、グリーンやフェアウエーの暗渠排水路の仕様のほうが大切だと
思っているが、これは別の機会に譲る。
散水機メーカーの技術者が必ず話題にするのは、均一な散水をするためには、
スプリンクラーヘッドのトライアングル配置と、100%のオーバーラップ距離である。
ところが、各品番固有の水量分布詳細は企業秘密らしく、一般のキーパーには
手に入らなかった。
ドイツ人の専門家が運良く手に入れて検討したところ、
オーバーラップ距離が100%ではヘッド周辺が水浸しになるが、75%にすれば
コストも安く、均一に散水できる事を発見したというのだ。
つまり、半径20mの散水能力を持ったヘッドの相互間距離を伸ばし、25m間隔に
配置するわけで、随分な節約だ。今では、設計家も75%オーバーラップ方式を
取り入れており、米国散水機メーカーの言いなりにはならないらしい。
実際の散水量分布は風の影響を強く受け、どんなに優秀な機材を理想的に
配置しても、均一には撒けない事も事実で、最近は風力計と連動したコント
ローラーも開発されているという。
さて基本に立ち返り確認しておくと、標準的なポップアップ式のスプリンクラー
ヘッドは、毎分150リットルの水を、半径20mの範囲に撒くから、毎時9tの雨が、
1256uの芝に降り注ぐ事になる。降雨量に直すと毎時7o程だが、3箇所の
スプリンクラーの水が同時にかかるような理想的な場所では、毎時20o以上の
結構強い雨と同じ事になり、全ての水分が地下に浸透できず、芝土の表面を
流れてしまう量が多くなるので、十分な注意が必要だ。
|