株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2011年5月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第100回
 
国会のナッパ服とゴルフ場の服装規定
東北関東大震災の話題ばかりで申し訳なく思うけど、被災者の方々に心からお見舞い申し上げます。
ハンガリー政府も五百万円程の義援金を送ったそうで、額はともかく世界中が被災地の復興を願っています。

 欧州での震災のニュースは、地震、津波、原発の順に報道されていたが、被災から十日経った頃から、ハンガリー内では断片的な原発被害だけになってしまった。
地震の少ない欧州では、日本からの輸入品の放射能汚染と保険会社の破綻懸念に関心が移ってしまった印象だ。
国内の地震保険業界は総支払金額が千二百億円以上になると政府に肩代わりしてもらえるし、各保険会社はリスクヘッジのために再保険にも入っている。が、今後再保険の料率は上がるだろうし、欧米の大手再保険会社は今回の打撃で株価を落としているのだ。

 震災直後の報道では津波の威力や被災者の冷静さや律儀さが話題になった。
文明国を自負する欧米でさえ、このような大災害直後は混乱した民衆が略奪行為に走るだろうから、各国政府関係者は洗練された日本の民衆をさぞ羨ましく思った事だろう。
その腹イセではないのだろうが、日本政府の危機管理能力の低さに矛先が向いている。
表層的な事例で本質的な問題ではないのだが、首相や政府高官の服装についての意見がゴルフとも関係があり、面白いので紹介しよう。

 問題になっているのはナッパ服で、欧州では殆ど見ないがご承知のように作業着だ。
国の最高意思決定機関である国会で、非常事態宣言も出ていないのに、首相が作業着姿で質疑応答をするのは外人には相当奇異に映るらしい。
政治家が震災復興の陣頭指揮をとっているような演出をしたい気持ちも分かるが、誰もご高齢の煩方に肉体労働を期待してはいないと思う。
もし別の有事があり、ミニタリールックや迷彩服が国会内を闊歩していたら、国際的にも大問題に発展すると思う。
現に英仏と少し遅れて米国も、他国リビアに派兵し軍事行動を展開しているが、各国首脳は立場をわきまえてスーツにネクタイの通常の服装だ。
民衆に寄り添って、もしくは民衆の立場で国策を決定する事も重要だが、場当たり的な対処になりやすく衆愚政治に陥る可能性が高いそうだ。
指導者に求められているのは民意の反映だけではなく、国際協調や国益を具現化するための道筋作りだと思う。

 さてゴルフとの関連はここからで、国会でさえ着衣に対して寛容というか臨機応変な民度を持った我が国で、ゴルフ倶楽部だけが服装規定を強要するのは奇妙な事だ。
今年の夏は昨年程ではないにせよ平年より暑いという予報だし、電力の逼迫により冷房温度も上げざるを得ない。
この機会に東北関東大震災の支援という名目を借りてでも、無意味な服装規定を緩和する事を提案しておきたい。
本当は被災地のゴルフ場は五年程度活動を休止し、コース内に仮設住宅を建設するのが一番良い地域社会貢献だと思うが、利権が絡むから簡単ではない事も想像がつく。
本来ゴルフ場は地域社会の核になる素地を持っているし、もしこの大胆な計画の可能性が少しでもあるなら、小生は喜んでボランティアとして参加したいと願っている。
一方で、今回の災害復興の過程で公共事業が増え、ゼネコンや不動産業も息を吹き返すから、夜のネオン街にも客が戻ってくるかもしれない。と、考える人もいるそうで、世の中色々の思惑があるものだ。