株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2011年10月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第105回
 
球筋とドッグレッグと『へ』の字理論
  日本ではまた内閣総理大臣が変わり、今度こそ長期政権をと望んでいる人も多いと思うが、国際会議(G8等)では数年来、度々変わる首相は個人名でなく『日本の首相』という呼称で呼ばれていた。
ところが来年は米国、ロシア、フランス、スペイン(11月に前倒し)、アジアでは中国や韓国、台湾や北朝鮮も大統領選または首脳交代が予定されており、国際会議の顔ぶれが様変わりする可能性がある。
つまり2012年前半は世界中で国際協調は疎かにされ、自国民に対する懐柔政策のオンパレード期になるだろう。
対外輸出によって景気高揚を目論む日本経済にとっては、強い逆風になることが予想され、ゴルフ業界も引き続き厳しい状況が続くに違いない。
という訳で、今回は楽しくない時事問題は避けて、ティーイングショットの球筋とドッグレッグしたホールとの関係について考えてみよう。
右打ちの場合で話を進めると、ゴルファーの大多数が高く上がり左から右に流れる球筋を持っているようだ。
以前、着弾地点のフェアウエー幅の半分を超える曲がり方をする物をスライスと呼ぶと習った記憶があるが、これはフェアウエー真ん中を狙って真っ直ぐ打つ場合、ラフまで曲がる事を判断基準にしただけで賛同しかねる。
一方で全英に参戦しているような猛者によれば、彼らの使うフェードは落ち際に数ヤード右に流れるだけでギャラリーには感知できず、彼ら自身が最も恐れるフックの予防策として使っているそうだ。

 少し低く出て右から左に僅かに曲がるドローや、曲がりが大きく着地してからも左に走るフック等を纏めて、まっすぐ打つ事を前提に、左右の曲がりを横軸に飛距離を縦軸にとってみよう。
ドローはフェードより少し距離が出るし、スライスは極端に飛距離が落ちるから、球が止まった位置の分布図はひらがなの『へ』の字になることがお分かり頂けると思う。

 さて此処からが本題だが、スライスとフックの打ち分けが可能で、曲がり角までは距離的に届くと仮定すると、右ドッグレッグしたホールではティーショットにどんな球筋を選択するだろうか?
真っ直ぐ狙うという理想解もあるとは思うが、全英に出場する猛者のように保険を掛ける意味でフェード系かドロー系かを選んで欲しい。
多くの読者が『コースなり』つまりフェード、スライス系を選ぶと思うが、小生はドロー、フック系を選ぶ。
なぜなら右ドッグレッグしたフェアウエー幅の中にボールを止めるには、『へ』の字の左半分の方が高確率だからだ。

『へ』の字の右半分を使うと二打目の残り距離は揃うが、着弾地点分布がフェアウエーと直行するから、飛びすぎて突き抜けるか、距離が足らずに手前のラフで止まる場合もあるだろう。
何よりフェアウエーの右サイドとか中央とか、次打に有利な位置に球を運ぶ事が難しく戦略的とは言いがたい。
ハザードの回避だけでは戦略とは呼べず、ゴルフを単調なゲームにするからだ。

 日本は林間コースが多く、Par4の距離が短めでラフも打ち易く刈り込まれており、柔らかくて砂の浮いたグリーン(ラフからでも止まる)が多い事が、右ドッグレッグのホールでスライス系の球筋が推奨される遠因だろう。
つまり多少曲がってラフに捕まるリスクより、残り距離が揃うメリットの方が大きい訳で、この戦法はガラパゴス的だとは思うが、何も考えないよりはマシかもしれない。