株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2012年9月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第116回
 
日本のゴミ分別と量について
帰国して東京に住むことになったが、それにしても日本の夏は蒸し暑い!
この気候では熱中症とか紫外線対策以前にゴルフどころではない。という友人の嘆きも理解できる。 さて、引越しには慣れているはずだが、日本の分別ゴミの分け方が判らず苦労しているので今回はその話題です。 環境意識が高いとされる欧州だが、驚くべきことにハンガリーでは家庭から出るゴミは分別する必要がなかった。

無論、街角には分別ゴミの集積場があり、五種類(紙、ペットボトル、缶、緑褐色ビン、透明ビン)のリサイクルボックスがあるのだが、強制力がないためか利用者は多くない印象だった。 一方、欧州で最も環境先進国と思われているのはドイツで、日本の分別回収のお手本らしいが、日本と大きく違うのがリサイクルできるゴミ(資源)であるかどうかが分別の最初の判断基準であることだ。 その後、有害物質の有無やゴミ処理方法の違いにより分別され、最終的には最大二十種類にも細分化されるのだが、その判断基準が判りやすく、とても優れた制度設計だ。

ゴミを回収する自治体の処理能力によって自治体ごとに分別品目が異なるのは当然だし、処理施設を持たない(つまり隣の自治体にゴミを押し付けている)場合は費用削減の目的で分別が細分化するのも必然だと思う。

だが日本の場合、基本になる制度設計が拙く、自治体の場当たり的な都合ばかりで利用者を混乱させているようだ。 しかし現状は分別種類の煩雑が驚異的で世界で最も細かく分別をしているにも係らず、相当程度の成功を収めている稀有な国なのだ。 まったく民衆の律儀さと勤勉さに支えられている訳だが、エンドユーザーの民衆にはどうにもならない事もある。

言うまでもなくゴミの削減で、家庭ゴミの過半を占める梱包資材や過剰包装の削減は我々の手に余る問題だ。 数十年単位で見ると使い捨て容器の普及によってゴミの総量が激増したのは明らかだが、今頃になって使い捨て容器もリサイクルするようになった原因は、技術革新よりも先見性の欠如だったと思う。

帰国して、日本の食材の豊富さと品質の高さに誇らしさを感じるのだが、価格の高さ(ブダペストの物価の二倍)と過剰包装に驚いている毎日だ。 夫婦二人の一日分の食事を作るのに、レジ袋一つ分の食品包装資材がゴミとして出るのは幾らなんでも過剰包装だ。

日本の家庭ゴミの総量は一日一人当たり1kgを超え、ドイツの15%増しだそうだから、小分け包装の削減や梱包資材の再吟味が必要だろう。

さて、ゴルフ場は家庭ゴミとは違って事業系ゴミだが、小型焼却炉は持っているだろうし、大型の浄化槽もあるだろう。先進的なキーパーは刈り芝を堆肥化するノウハウも蓄えているはずだ。 ということは、プラスチック製品や有害物質を含まないゴミは資源として利用できるし、ゴルフ場外から受け容れる事も可能かもしれなのだ。

この場合、燃料費は少し余分に係り、スタッフの仕事も増えるのだが、地域貢献や社会的責任の一端を担えるし、時代のニーズにも合致している、 ゴミ焼却時に出る余剰エネルギーでお湯を沸かしたり温風を使ったりできる筈だから、結構色々な利用方法があるように思う。 ゴルフ場といえども、時代とともにその事業形態を変えていかなければ、利用者の理解が得られ難くなっているのだ。