株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2012年10月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第117回
 
管理の行き届いた日本のコース
日本ではゴルフ番組がたくさんテレビ放映されていて、その人気に驚いている。 ハンガリーは元よりスペインや英国でさえも、ゴルフ番組は有料のスポーツチャンネルでの視聴が多く、お笑い芸人が登場するレッスン番組など考えられなかった。

この現象はゴルフが娯楽として認知されている証拠だから好ましい事だが、今回は日本のゴルフ番組雑感です、それにしても最近のスローモーション技術は凄い!

初めにコースの話をすると、日本のコースはテレビ映りが良いとはいえないと思う。 樹木や高低差など、構成要素は充分あるのに絵にならないのは、カメラマンの腕が悪いか?フェアウエーとラフの比率や植栽計画を含めたコースのデザインが単調すぎるか?だと思う。

競技者のプレー技術は云々できないのだが、その代わりに友人が話してくれた英国ゴルファーの幼少期の熟達課程を紹介しよう。 スコットランドの少年が最初に覚えるテクニックはバンプ&ラン(ランニングアプローチ)で、ゴルフは日本の缶蹴りや三角野球、もっと言えばアプローチ練習はメンコやと米ゴマと同じガキの必修科目だから、仲間同士で必死に競争するのだそうだ。

7鉄か8鉄を僅かに開いて、本来のスイートスポットよりトウに数ミリ外してヒットするのがコツらしく、全くスピンないボールを打つのだ。 いうまでもなくノースピンの球は着地してからの動向が予測しやすく、結果的に傾斜や芝による影響だけに集中できるから、ピンに寄る確立が飛躍的に高まるのだそうだ。 因みに日本のピッチ&ランは欧米ではチップ&ランだ。

次に覚えるのは極端に深いラフからの脱出だけに使うスペシャルショットで、飛距離は最長50ヤード。 ラフに負けないようにウエッジを開いて、オープンスタンスの中央に置いたボールを、グリップを固めて肩を深く使い、剣道のケサガケさながら、鋭角的にクラブを振り下ろす打ち方だ。

くるぶしが隠れるかそれ以上のラフに捉まった場合は事実上この方法しか使えないから、本物のラフでは潔く前打を反省して次打以降のリカバリーに集中するのだそうだ。 何を言いたいか?というと、管理の行き届いた日本のコースでのプレーに慣れていると、稀にしか遭遇しない悪条件下で困ってしまうと思うのだ。

さて最後はグリーンの品質だが、相対的に見て旨く管理されていると思う。 だが、ボールが僅かに跳ねながら転がっているようだ。 欧米ではこの種のグリーンを『バンピー』と称し、これは相当な悪口なのでその理由を説明しておきたい。 転がっているボールが跳ねるという事は、上下方向に弾むばかりではなく、斜めに弾んで進行方向から外れる場合もある訳で、狙い通りのラインに乗らない事を意味する。

つまり滑らかに転がる事は、プレーヤーがグリーン品質を感じる最重要項目で、常に速度より上位にある。 たとえば、雑草が混じったグリーンでは、コロニーの部分で進行方向が曲げられるか、極端に速度が落ちて傾斜通りに転がらないから、グリーン全体の評価が落ちるのだ。  この解決方法はローラーによる転圧(嫌われるだろうが)を日常的に行う事だと思う。 クリケット場よりも軽微な転圧で充分だし、多くの日本のコースは土砂崩れが起きるような豪雨に日常的に晒されているのだから、新たな多雨地域仕様の管理方法だと思う。