株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2012年12月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第119回
 
河豚と牡蠣と神戸ビーフ
食欲の秋。という訳で墓参りに託けて河豚を食べた。

小生が育ったのは広島だが、両親は下関、妻は神戸出身だから、大河ドラマの平清盛というか平家一門と全く逆の経緯を辿っていて面白い。 最近は河豚の身欠きは通販でも購入可能だし、東京都では一般の飲食店でも扱えるようになったが、小生は下関以外で食べた経験がない。

つまり、河豚は地域性が強く、季節限定の食べ物なのだ。

次は、広島で食べた牡蠣フライの揚げ方の工夫の話。
非常に簡単なので試して欲しいのだが、牡蠣の身の部分を摘んで縁側というかビラビラの部分を下に垂らした状態、言い換えれば砲弾型に整形してパン粉を付けると、美味しい牡蠣フライになるのだ。
何を言いたいかというと、産地には良い材料だけではなく、その材料を生かす技術も併せて存在しているのだ。

河豚の話に戻ると、英国人の友人が『日本人は毒のある魚を食べると聞いたが本当か?』と心配そうに尋ねたのを懐かしく思い出す。 申し訳ないが『大きなお世話』で、彼らは百年経っても河豚の美味しさは判るまい。 尤も、河豚に限らず白身魚は淡白だから、ポン酢醤油の味ばかりが気になるが、歯ごたえというか食感を楽しむのは素敵な食文化だと思う。

 ところで、歳をとると食べ物の好みも変化し、日本人の場合、脂っこい食べ物よりアッサリした物を好むようになると思うが、小生の知る限り欧米人には当てはまらない。 量は少なくなるはずだが、相変わらず若い時と同じ物を食べているようだ。 頑固というか選択肢が少ないというか、彼らを見ていると日本人は贅沢な味覚を持っていると痛感させられる。

霜降りの神戸ビーフは、その値段の高さも含めて海外にも知れ渡っているが、薄切り肉をスキ焼きやシャブシャブ等の独特な調理法で食べるのが特徴的だと思う。 欧米での一般解のステーキで霜降り肉を1ポンド(453g)も食べたら、確実に胃もたれを起こすだろう。

因みに英国で知り合ったアルゼンチン出身の友人に拠れば、彼らのホームパーティーでは1人当り3/4kgの肉を用意するのが普通らしい!

 食べ物のついでに『とりあえずビール』という訳で、最後は日本の酒税法の話題。 ビールが良く飲まれるドイツでは、法律で麦芽とホップと水だけを原料とする決まりがあり、日本で一般的なコーンスターチを原料の一部に使った物はビールではない。

日本でも国際規格というかドイツでビールとして販売できる物も少量だが作っており、日本の酒税法上(イ)ビールと区分けされる。 小生が若い頃から親しんできた物は(ロ)ビールと呼ばれ、米や雑穀類等もある程度は原料として認められる。 実は日本でのビール系飲料は第二、第三のビールやノンアルコールビールもある。

水とホップを除く原料つまり麦芽の使用率が高い方からビール、発泡酒、その他の醸造酒やリキュール(発泡性)と分類されるようだ。

日本のビールは芳ばしくて美味しいし、気候や食べ物とも合っていると思うし、日本のゴルフと擬える心算もない。 食べ物に関して日本人は季節を感じ、場所を認識し、経験と勘を積み重ね、調理方も選び、時代変化を受け入れる素地が出来ていると思う。
ゴルフではどうだろうか?
コースもプレーヤーも規定打数に縛られて窮屈なゴルフになっていないだろうか?