株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2003年12月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第12回
 
排水不良の対処療法から抜本的施策
 本来ならば今年の総括をすべき時期だが、今年は多くのゴルフ場でグリーンの状態が悪く、その原因を探り対策を施す方が先決に思われる。
 先ず初めに今年の天候不順をどのように捕らえるかだが、稲作などの指標から見て、十年に一度は起こり得る程度の冷夏であったと思う次にベントグリーンの障害と言う意味からは
日照不足を原因にはできない。これらの要素は、基本的にベント芝にとっては
都合であった筈だからである。最後にお客様の反応だが異常気象だから
仕方が無いと納得して下さり、クレームがこなかったならば、特に対策する
必要は無いかもしれない利用者の希求水準を超えた過剰管理は無駄な投資と
非難される時代だからだ。
 一方でほんの少し専門的知識を持つ人間から見ると排水不良による
土壌の水分過多が原因と思われる場合が多く抜本的な対策を施す必要が
ある事も事実だと思う
ベントグリーンの管理では去年まで実績のあった
コースでも、今年のベント芝は地中から生えていると言う実感が薄く、ピッチ
マークの状態から見ると地表にこびり付いたカビのような有様で、苔の中に
埋もれそうであった多分以前から浅い所にブラックレイヤーなどの不透水層
が形成されつつあり、長雨による酸素欠乏が引金になって浅根現象が一気に
顕在化したのだろうと思われたこれからの季節は最低気温が氷点下になる
事も多くこのままの状態で放っておくと今度は凍害や霜柱に悩まされる事に
なると危惧している。
 日本世界のゴルフ界の中では最も雨量が多く季節による寒暖の差が
激しい。冬場の雨量が夏場に較べて多いスコットランドでも凍害による被害が
あまり起きない事を考えると、早急に国情に合った床構造と管理手法を確立
しなければなるまい。

 と言うわけで排水不良の対処療法から抜本的施策まで、二回に分けて
考えてみたい。
 基本的に湿潤状態による被害とは土壌中の気層が水に置換されその状態が
長く続く事から起きてくるこの状態を脱するには要因を特定し液層が気層に
容易に置換できる環境を作ってやる事と潜在的な要因を見つけて恒常的には
湿潤状態にならないように配慮する必要がある訳だが先ず現状を知らな
ければ何もできない。
 
 カップ切りを利用してグリーンの断面を調べ不透水層の有無や菌類の
培養をしているゴルフ場が多いとと思う。加えて是非試して欲しいのは、暗渠
排水がキチンと機能している事を確認する作業だ。特に、開場以来一度も洗浄
した事がない有孔パイプ詰まっている場合が多い。例えは汚いがせっかく
水洗便所を作ったのに
一度も水を流した事が無いトイレを想像すると判り
やすい。施工時に洗浄口や空気抜き口を計画しておかなかった設計家や施工者
にも思慮不足の責任はあるが日常的に管理してきたキーパーからこの件を
相談された経験も無い。余談だが現在流布している排水形式は広葉樹の葉脈
のような形をしたヘリボーンシステム(鰊の骨)と呼ばれる物だが、ずっと
性能でコストもほぼ同じ形式もあり大規模な改修工事では有益だ
 排水不良の原因がルートゾーンに特定できたとして、外科的(物理的)対処
療法
は、不透水層を確実に貫ける長さのタインを使う事内科的(化学的)
療法は
好気性菌による不透水層の溶解だが、誌面が尽きたので次回に廻す。