株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2013年2月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第121回
 
原点の砂
今回は原点に戻るという意味から砂を取り上げよう。

ゴルフコースでは、バンカーやグリーンの床砂に使われるばかりでなく、トップドレッシングや目砂など日常管理でお馴染みだろうが、その特性を再確認しておこう。砂は粒径により粗砂(2〜0.2mm)と細砂(0.2〜0.02mm)とに区分けされるようだが、透水性の観点からは粒度分布が重視される。

粗い砂でも泥やシルトで空隙が埋まると透水係数が激変するからで、粒径の累積分布図の角度は急なほうが良い。 特に両端の裾が長い場合は、フルイに掛けるか洗浄してから使用する事が推奨される。

山砂よりも川砂、上流よりも下流、川砂よりも海砂(浜砂)が望ましいが、近年は砂漠の砂も輸入されているらしい。 USGAのグリーンセクションでは、圧密によって砂粒が割れない物理特性や、酸性雨でも溶解しない化学特性等も求めており、大概は現地の砂が使えず業者経由で搬入するから高コストなのだそうだ。 いずれにしても購入した砂をそのまま使うのは考え物だ。

日本のゴルフグリーンで撒かれるトップドレッシング用の砂は、英国に比べると圧倒的に粒径が大きい。 第一、粒径1mmの砂を幾ら平滑に仕上げても不陸は1mm以下にはならないから、そこから生えている芝を4mmではなくて3.5mmに均一に刈ることなど不可能だ。

つまり、滑らかな転がりや速度を求める場合、芝種よりも砂の粒径を先に考えるべきだが、これは多雨地域の日本では透水性悪化が懸念される。 しかしバンカーを観ると、結構な強雨が降った直後でも表面から5cm位しか濡れていない事をよく経験する。 もちろん時間が経って水分が表層から拡散すれば、全体が湿った砂になるのだろうが、芝土の表面に水が走るような豪雨でも短時間では地下浸透しない事を示している。

つまり、砂場や芝土の深部に水を届けるコツは、量よりも時間が関係しているのだ。 芝や有機物の分解過程でできる撥水物資や、表層のサッチが水の浸透を阻害していると解説される事が多く、それはそれで間違いではないだろうが、もっと根本的な自然の摂理があると思う。

 グリーンの水遣りを考えてみると、スプリンクラーは水を遠くに飛ばすために結構な水圧(言い換えれば単位時間当たりの水量)を必要とし、その水量はグリーン面が浸透できる許容量とは全く無関係に決まっている。

ゴルフ場は畑と違って頻繁に耕さないから経年変化の影響が大きく、硬いグリーンが好まれるようになって以前より締まって益々水分が浸透し難くなってきているようだ。 小生の提案は先に述べた少量長時間散水を実現するため、スプリンクラーの個別使用の可能性である。

ポンプの吐水容量の関係で、あるグリーンの散水中は別のグリーンの散水は止めていると思うが、スプリンクラーを個別制御(例えば各グリーン一箇所ずつ廻し、決して同時使用はしない)でより広範囲に長時間散水ができる筈だ。

 ただ、どんな高価な散水システムも均一性から見て自然降雨に勝るものはない。 が、芝から見ればスコールや夕立のような強雨は地下浸透できる許容量を超えてしまうので差引いて積算すべきだし、シトシト雨は望外に水分補給できるが逆に水分過多で根が窒息する危険性もある。 理想的なターフは、芝の表面が濡れてはいないが、根から供給された水分でしっとり潤った状態だろうと思う。