株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2013年3月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第122回
 
英国と日本、ゴルフ場の食事情
日が長くなってゴルフシーズン突入だが、英国と日本ではゴルファーの朝食の習慣が違っていて面白い。
健康志向が強い昨今では朝食を抜く人は少ないと思うが、英国はクラブハウスで朝食をとる習慣はない。
殆どが自宅近くの倶楽部に所属しメンバー同士でプレーするからだが、誘われて遠征する事もあるだろう。
そんな時は、幹線道路沿いに必ず存在する朝食屋(一日中朝食メニューだけ)を利用するか、スタート時間を遅らせるのが普通だ。
英国はスループレーが原則なのでスタート枠が午後遅くまで延びており、昼食後のプレーなどザラなのだ。

 因みに典型的な朝食屋のメニューを紹介すると、ミルク入りの紅茶かコーヒーがマグカップで運ばれる。
次に一斤10枚切りの2枚分をこんがりトーストし、三角形になるように4分割した食パンが出る。
料理は版で押したように楕円形の大皿に盛るのだが、目玉焼きとカリカリに焼いたベーコン、マッシュルームとトマト、それとパン粉が入っていてドイツ人が怒りそうな英国式ソーセージが定番だ。
値段によってはハッシュドポテトや揚げパンやベイクドビーンズも入っているが、邦貨で500円程度だろう。
そして朝食屋の省略版が中産家庭の朝食なのだろう。

 実は最近日本の外食産業も最後のフロンティアとして都市生活者の朝食需要を狙っており、続々と新メニューを創出している。
という事は瞬く間にゴルフクラブでの朝食も比較対象にされるに違いないのだ。
ご飯と味噌汁という和食派から、厚切りトーストとコーヒーの洋食派、中華風のお粥も食べたがるグルメというか我侭なニーズに十全に応えることは不可能だ。
朝食に限った話ではないが、料理人の手配だけではなく厨房設備も什器備品も別々だし、食材管理も煩雑な割には喜ばれていないように思うのは私だけだろうか?
ゴルフ場の特性として、18ホール換算すると昼食は6分間隔に8人ずつで、最大200人の来店者だ。
つまりオフィス街のランチタイムに比べずっと客足が波状分散し、他の店には行けないのだから営業形態としては理想的だと思う。
しかし英国と違って過半の入場者が他のゴルフ場にも行くから、料理やサービスを比較できる立場にある。
これらを考えると、和洋中どれかに特化して魅力的な食堂を目指すのが得策に思えるのだが如何だろうか?
個人的には箸だけで食べる和食を推薦したいが、山奥のゴルフ場で刺身定食を食べたいとは思わないなぁ。
発想を変えて著名ラーメン店を複数誘致し競わせても話題性があるし、いっその事、うどん蕎麦ラーメンの麺類対決も面白そうだ。
余談だが日本式のラーメンは近年ニューヨークで人気らしく、有名店も続々海外進出しているそうだ。

 振り返って日本のゴルフ場の食堂の現状を考えると、朝食需要は高速道路手前のコンビニで売っているオニギリと競合しており、昼食はコックさんが頑張るほど食材ロスが出る泥沼に嵌っているのではないか?
冷蔵庫が大きいと結果的に古い食材から提供せざるを得ず、薄い食材在庫と材料の使い回しが利くメニュー組み立てが切り札になるだろう。
日本のコースは2グリーンが特徴的だが、その食堂は3グリーンシステムなのだ。