株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2013年9月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第128回
 
近未来の雑草抜き
  2013年9月といえば、7年後2020年夏季オリンピック開催地が正式決定する。 現時点で東京は、他の2都市に比べて不安要素が少ないとは思うが、実際の開催年の事は誰にも判らない。 地震津波や政治経済に加え、既に日本は総人口のピークを過ぎており、少子高齢化が進んでいることは確実なのだ。 という訳で近未来のグリーン管理を予想してみよう。
とはいっても、GPSを利用した全自動無人モアは確実に実用化されるだろうから、今回は雑草防除がテーマだ。

  まず基本的にゴルファーや管理者が雑草と認識するのは、その植物が他の大多数とは違う色や形で目立つからだが、殆ど全てが雑草で覆われている場合は問題視されない。 英国の著名インランドコース例えばサニングデールやウエントワースが良い例だが、9割以上がポー・アニュアつまりカタビラが繁茂するグリーンでは、少なくともプレーヤー側からのクレームはない。 無論ベントとフェスクをインターシードし続けているのだが、散水と施肥等の管理環境により、カタビラ優勢に落ち着いてしまうらしい。 ついでに、グリーンの大改修をした場合、3年間は全てが旨く行くのが常識で、3年以内に不具合が出るようだと、芝種選定を含めて管理手法に重大な欠陥があるらしい。 幼い芝は活力があり、新しい環境への順応性があるからで、逆にいうと管理者の真の力量は3年以上経たないと判断してはいけないそうだ。

一方フェアウエーの雑草は、刈高が他と揃っていればプレーに支障はないと思う。 ところで、NHKテレビ番組で深海ザメの特集があり、ミツクリザメという奇怪な生物を紹介していた。 このサメは吻(フン)と呼ばれるデコチンが極端に発達しており、その下部に多数の電気受容器を備え、海底に潜む獲物の発する生態電気を感知して狩をしているそうだ。 つまり、自前の金属探知機でお宝を探しているわけで、光の届かない深海底で生き抜く特殊能力に驚いた。 この手法はグリーンの物理的な雑草取りにも応用できると思うので少し考えてみよう。

その前に、薬剤で雑草防除する方法を費用と労力の観点から選択することが多いとは思うのだが、未だに雑草は抜くに限ると思っている。 ミツクリザメに学ぶ雑草防除は2点あり、雑草の特定技術と、その抜き方である。 特定方法から話を進めると、近年の電子機器の技術革新は凄まじく、GPSを始めいまや数千円で買えるデジカメでも手振れ補正や、人間の顔認識ができる時代なのだ。 つまり、雑草認識程度なら複写機のスキャン部分などを利用すれば既にハードもソフトも揃っていて、GPS利用の自走式の雑草取り機ならば、雑草の種類や分布を記録することも容易にできる。 更に人海戦術とは違い、日光は必要ないから夜間の運用も可能で管理者も楽だろう。

 次に特定した雑草の抜き方だが、ミツクリザメのように顎が突出して獲物を捉えるのが最良だが、グリーンが穴だらけにならぬように自動的に補修する必要があると思う。 具体的には、直径1cm長さ5cm程度のシリンダー(つまりホロータイン)で雑草を根こそぎ抜き、同形状のターフでその都度自動補修する。 この種の工作機械は、既に製造現場で広範に実用化されているから、転用可能だろう。機材の運搬を考え50kg内外で納まれば、ゴルフ場だけではなく他の芝草環境下でも需要があると思う。