株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2014年1月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第132回
 
年末年始の倶楽部行事
  私の知る限り、欧州では年末に大掃除する習慣はない。 日本の住宅に比べてスペースが豊かなので、平常から整理整頓しやすのかもしれないが、クリスマス・デコレーションのついでに家財道具の入れ替えをしている印象だ。 英国の友人宅で日本の大掃除の話をしたら、夫人には大好評だったが、友人は困惑顔だったのを思い出す。 英国家庭の序列として大掃除などは夫君の役目なので、余計な情報を奥方に与えるな!という意味だったのだろう。 日本は男性の家事分担割合が最も少ない国のひとつだから、今年から男性諸兄も心を入れ替えて頂けたらと願う。

さて英国の冬はゴルフシーズンでなくコースには人影も疎らだが、元旦にはプレーを含む倶楽部行事がある。 数週間前に正装して倶楽部主宰のクリスマスパーティーをしたばかりだし、多くの場合翌日が仕事初めだから、元旦は砕けた会合である。 ただ年会費の納付期限が年末で、正月から新年度が始まり会員名簿も発行されるので、新入会員の顔見世興行としても機能しているようだ。
 正月といっても日本と違い『おせち料理』ではなく平常メニューだが、必ずベジタリアン用のチョイスがある。 近年は宗教上の理由だけでなく、ダイエットや動物愛護の観点から菜食に拘る人が増え、その意味でも日本食は世界中で評価が高いのだ。 言い換えれば、日本の食文化は欧米にも認められた訳で、次はゴルフ文化をと望むのは無い物強請りだろうか? 経済的な発展が期待されるアジア諸国の中で一足先に経済大国となり、自由主義または民主主義の法治国家となった日本は、その地政学的な有利さを含めて、欧米を含め諸外国の羨望を集めている。 国内だけを見れば色々文句もあるだろうが、穏やかな方法で改善できる問題が多いように思うので、今年は良い年になってほしいと思う。

 さて個人的な経験則だが、スープまたは汁の旨い地方の料理は例外なく美味い。 国によって魚介類とか動物の骨や肉で出汁をとるとか色々だろうが、代表的な日本の味噌汁はイリコ出汁か、昆布プラス鰹節の出汁だろう。 実はイリコ出汁(広い意味で魚のアラから取る出汁)は地産地消の代表格で、北の昆布と南の鰹を組み合わせた出汁は、大げさに言えば食材を確保できる広大な領土の証だったはずだ。 無論、乾燥させて保存や運搬しやすい状態で流通しているから世界中どこでも手に入るのだが、経済活動の及ぶ範囲を示す事に変わりはない。 そういう意味でゴルフ用資材は地産地消と広域経済圏との狭間で、現在は商圏側に傾いた入手経路になっている。

ところが、各ゴルフ場の気候風土は土地柄そのものだから、決して広域化できない。 また気温などの気象条件は、数百kmの水平距離が数百mの標高差で帳消しになる。

つまり近隣ゴルフ場のデータは無視しても、徹頭徹尾自分のコースの気象条件や土壌を分析すべきだと思う。 その上で土地柄にあった管理方法や資材を選ぶべきだが、昔ながらの作業や段取りが見直される場合が多いようだ。 ところで、我が家は一度もおせち料理を作った経験がないことに気がついた。 海外在住中は不可能だったし、帰国しても実家で正月を迎えることが多く、自分で作る機会がなかったのだ。 今回の食材偽装問題をきっかけにして、昔からの知恵を確かめる目的で、自分でおせちを作ることにしたのだ。