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月刊 ゴルフ場セミナー 2014年2月号 |
発行:ゴルフダイジェスト社 |
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連載コラム グローバル・アイ 第133回 |
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厳寒期にグリーンを凍らせてしまった経験があると思うのだが、春先に影響は出ないだろうか?
今回は水遣りのあれこれについて考えてみよう。
前にも書いたが、グリーンがカチンコチンになるのは、水と置換すべき床土の気相部分以上に水分が溜まっていて、滞留水どうしが連結した状態のまま連続的に凍るから、グリーンが凍ったように見えるのだ。
水は摂氏4度を下回ると密度が下がり、凍ると1割程体積が膨張するから、芝土や床部分が凍ると芝を浮き上がらせ、最悪の場合根を断裂させてしまう。
というわけで、春先に元気な芝に出会うためには床砂の透水性が鍵だと思う。
芝自体の凍害については、日本より寒いと思われる欧州はおろか氷点下35度にもなるロシアのゴルフ場でさえ、厳寒期でもシャリシャリと凍った芝にはあまり出くわさなかったから、芝 種選定で解決できる問題だと思う。
いくら他の指標が優秀でもその土地の気候に合わない芝は使ってはならない。
さて、今回のテーマの水遣りだが、当然その土地の自然降雨量と関係する。
また最適な散水量は季節変動し、床砂の透水性やグリーンの傾斜、芝種や刈高にも影響される。
英国のリンクスコースの年間降水量は日本より少なく600mmから900mm程だが、散水設備のなかった昔から芝が自生していた。
逆に現代の日本では、毎時30mmを超える激しい雨に対する排水も考えておかなくてはならないが、東南アジアの熱帯雨林気候下では100mm/時の猛烈なスコールが降る場所にもゴルフ場が存在するのだ。
極端な例では透水性の良いスコットランドのリンクスでは、スプリンクラーを消雪装置として使うらしい。
一般的にグリーンの水遣りは4mm/日程度を基準にする場合が多いと思うが、植生に注目したケッペンの気候区分によると大部分が温帯湿潤気候の日本は水分蒸発量が乾燥限界を上回り森林が成立する一方、芝が枯れてしまうほどの乾燥が続くことは希で、適切な床砂層があれば数日毎の散水間隔にすることも可能だ。
近年グリーンスピードに対する要求も厳しく、小生は地勢が複雑な日本においては上り下りの傾斜による速度差で変化をつける方が好ましいと思うのだが、平坦なグリーンの刈高を下げて速いグリーンに仕上げる方が好まれる傾向にある。
ということは、トップドレッシングの砂の粒径を少なくとも0.5mm以下に抑える必要があり、透水性悪化とファインサンドキャップ効果に注意が必要だ。
纏めると近未来の水遣りは、高温多湿の夏場日中に対するシリジング(間欠散水でも良い)を前提に、現在よりも少量を数日毎の間隔でやる事になるだろう。
また、ルートゾーンは基底部の透水性を600mm/時以上になるよう大粒径とし、同時に多孔質無機物を少量加えて保水性を確保する。
更に芝土(ターフ)部分は表層だけを小粒径とするためナセリの床砂も吟味する。
大多数がラウンド当たり30パットを超えているような現状では、これ以上グリーンを難しくするのは考えものだと思うが、自分の腕は棚に上げて文句を言うのが消費者の常なのだ。
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