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月刊 ゴルフ場セミナー 2004年2月号 |
発行:ゴルフダイジェスト社 |
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連載コラム グローバル・アイ 第14回 |
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久しぶりに米国西海岸に行く機会があり、アメリカの底力に感服した。
アリゾナ州フェニックスは、クラブ
メーカーのピン社の本社工場があるので、ゴルファーにとっては馴染み深い。
道を隔てた隣町のスコッツデールも、
砂漠地帯に人工的に造られた美しい
コースが点在し、その中でTPCスコッツデールという、フェニックスオープンを
開催するコースを取材した。
TPC(トーナメント・プレーヤーズ・クラブ)は20余年前、当時のコミッショナー、
ディーン・ビーマンらによって作られた倶楽部組織で、プロのトーナメントを
開催可能な新しいタイプのコースを造り、営業収入を倶楽部組織の財源にする事
によって発展していくという、まったく新しい営業展開を特色としている。
TPCのコースは、最初のソーグラス(ピート・ダイの出世作)から、マウンドを
多用したスタジアムコースを標榜し、その大胆な造形と観客スタンドの融和に
よって、池一辺倒だった米国ゴルフコースに新しい潮流を作ってきた。コースの
造成費を含めた初期投資は、コースを取り囲む宅地開発と抱き合わせて捻出
しているが、これは米国の一般的な開発手法である。TPCスコッツデールを例に
採ると、16年前のクラブハウスを含めたコースの開発費は2.5Mドル、当時と
貨幣価値も変わっているが、現在のレートを使うと約3億円。支配人に今この
コースを造ったとしたら幾らかかるか聞いてみると、約25億円という答えが
返ってきた。
メンバー数は僅か90人だが、プレーヤーの大半はテレビ中継で見たホールを
自分もプレーしてみたい、というお上りさん的な旅行者で、ビジターフィーは
カート使用料も含め200ドルという、高額に設定されている。因みにメンバー
フィーは、入会金50万円、月会費4万円で、英国の一流所と同程度。
さて、肝心のコースの方は、芝草管理という意味から見て日本の平均像と
比較すると、グリーンが中の下、ティーインググラウンドが上の中、フェアウエー
は芝が厚すぎるので上の下、セミラフは上、砂漠地帯の植生を残したラフは
見た事も無い風情なので特上。芝は基本的に冬場に枯れるバーミューダグラスに
ライグラス(グリーンも!)をオーバーシードしており、バンカーの淵やプレー
ラインから外れた場所は、オーバーシードせずに残し、色相の違いを際立たせて
独特の雰囲気を作り出している。基本的に年間降水量が20o程度の砂漠地帯では、
芝管理は散水と同義語となり、毎日1Mガロン(1ガロン=3.7L)の水が必要で、
そのコストは年間1Mドルだそうだ。つまり、水量によって芝を維持できる面積が
決まり、この環境下ではパーウィック方式も存在意義があると思う。
一方、コースレイアウトやハザードの配置手法などは、近年の米国設計陣の
層の厚さを反映してか、新鮮味も無い代わりに大きな破綻も無く、良くこなれて
いる。尤も日本の平均像と比較すると、全てのバランスが妥当で適切であり、
一本筋の通った意図や意志が感じられる。
さて、此処で一番印象に残ったのは、カート道路の絶妙な敷設であった。
ルールを熟知した配置、見せたり隠したりする場所の設定、マウンド群との絡み、
プレーヤーの動線との接点、管理道路との取り合いなど、勉強になる所がとても
多い。本当はこういう場所にこそ、設計や管理のノウハウが詰まっているもの
なのだ。
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