過日、欧州設計家協会から、3月初旬に開かれる中国のゴルフフォーラムの案内が送られてきた。
これは、米国主導で行われる、中国政府を巻き込んだ経済戦略の一環らしく、額面どおりに受け取れない部分もあるが、数少ない中国のゴルフビジネスの情報であろう。
案内状によると、今年は中国にゴルフが輸入されてから20周年目の節目に当
たる年で、特に近年のゴルフビジネスの発展は目覚しいらしい。
中国政府の発表によると、現在およそ200のゴルフコースおよび倶楽部組織があり、
ゴルフ人口は既に10億人(100万人の間違い?)を突破して、なお毎年2,3割の
爆発的な増加傾向にあるそうだ。
しかもゴルフ用具や資材などの裾野産業も、人件費の関係で投資対象として有望
であり、潜在的なビジネスチャンスは沢山あるらしい。
2004年はPGAヨーロピアンツアーやアジアPGAツアーなどの国際競技が中国で
開催されるはずだし、VOLVO、BMWおよびTCLなど、中国ビジネスを有利に進めたい
欧米企業が、認知度アップを狙ってトーナメント開催を打診しているという。
中国経済の多少歪だが恒常的な発展によるものか、このような状況はゴルフ
に留まらず、他のスポーツや余暇行為全般に及んでおり、巨大なマーケットに
なりつつある。
総合スポーツ用品メーカーのナイキ社の役員も、中国でのゴルフビジネスが、
ヨーロッパ市場のそれと等価になると考え、欧州勢に対抗するためか本格的に
中国本土での商圏確保に乗り出す事にした。
中国側もこの機を逃さず、中国ゴルフ協会主催のゴルフフォーラムを企画し
た訳だ。
演題を見ると、華々しいトーナメントやゴルフ場開発の話題もあるが、本質的
には用具製造産業の育成に焦点があたっている事は明らかで、急速に進出して
きた台湾メーカーを牽制する狙いが明白である。
さて、ゴルフ業界関係者の読者にとっては周知の事だが、ゴルフ用品の製造に
関する、台湾と中国本土の政治的な過去を再確認しておこう。
近年まで台湾を中国の一部だと主張する中国政府と、独立国だと主張する台湾
政府の狭間に立って、日本を含む大多数の経済強国が玉虫色の外交を展開して
きた。民主主義国家において自国に有利なのは、政治の正当性ではなく経済
展開の如何に因るからで、判断を先送りにしてきたのだ。
よって実体経済はあっても国家間での取り決めは結び難い状況になり、国際特許
や商標権などが宙に浮いていた。
中華民族の商売上手な面もあると思うが、パリ条約に加盟せず、クラブヘッド
の模造品やロゴチェンジしただけのコピー製品を作り続けて台湾メーカーは
実力を蓄えたのだ。
いまや台湾メーカーは世界のゴルフクラブ製造の分野で、量的に過半を占める
に至っているが、最近より人件費の安い中国大陸本土に、急速に生産拠点を
シフトしつつある。
米国クラブメーカーの思惑は、どうせ中国本土で生産するのなら直接本土と
取引する方が有利だから、台湾メーカーの介在を排除したい考えなのだろうと
思う。
お隣の中国のゴルフフォーラムの情報さえ欧州設計者協会経由、つまり地球
を一周してからしか伝わってこないような状況では、このような世界規模の
ビジネスダイナミズムに遅れをとる事は明らかだ。
米国や中国でさえ国を挙げて産業構造の改革を後押ししている現状を考えると、
業界内での利権争いに終始している何処かの国には未来がない。
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