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月刊 ゴルフ場セミナー 2014年12月号 |
発行:ゴルフダイジェスト社 |
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連載コラム グローバル・アイ 第143回 |
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年賀状やクリスマスカードを書く時期になった。
最近はパソコンを使うためか、元々下手だった宛名書きどころか、数行の挨拶文に使う漢字が思い出せない有様だ。
というわけで、今回は技術の進歩によって逆に退化してしまった情緒の話です。
寒い季節に恋しくなるのは暖かく燃え盛る炎だと思う。
欧州の住宅では今でも暖炉が家の核と位置づけられ、その傍が家長の居場所だ。
実は薪を使う普通の暖炉は巨大な換気装置で、暖気を煙突に導き冷たい外気を呼び込むので思ったほど暖かくない。
暖炉本体の輻射熱と炎の放射熱だけで快適に過ごすには、暖炉に背を向けた方が良い。
古い外国映画を見ると、食卓の中央で暖炉に近い席が賓客席なのはそういう理由だ。
ところで、応接間(シッティングルーム)の場合は、間口の広い暖炉を囲むように車座に座り、炎を眺めながら談笑するのが好まれ、ゴルフ場のクラブハウス等ではこの形式が多いようだ。
昔の暖房は暖炉だけだったから、税の徴収官は部屋数の代わりに建物の外側から煙突の数を数えたそうだ。
それで、上下階の煙突を集合させて一本に見えるようにデザインする事が流行り始め、建築設計に革新をもたらしたと言われている。
時代が下って、薪に比べて熱量の大きい石炭が暖房に使われ始めると、暖炉の開口部が小さくなり鋳鉄製の暖炉ユニットも使われるようになった。また、暖炉下部への外気導入方式も開発され、室内温度も上がっただろう。
ただし、石炭の炎は生木に比べて人工的に感じやすいので、炎が情緒的に揺らぎ、外気導入にも対応した薪ストーブが小住宅に普及した。が、今度は薪が爆ぜる音がガラス扉に阻まれてしまったのだ。
現代のロンドンでは、煙突から出る煤による粉塵公害や、火の粉による火災防止の観点から、M25(東京の環八に相当する環状道路)の内側では暖炉は禁止され、もっと近代的な温水ラジエターによるセントラルヒーティングに変わってしまった。
日本の暖房器具は長い間囲炉裏か火鉢とコタツだ。
建築的手法という意味では隣国韓国のオンドル(毎冬、一酸化炭素中毒事故が起きた)に比べても未開拓だった。
しかし考えてみれば、炭を燃やして暖を取るという手法は、原料の炭焼き技法も含め、相当高度に洗練されている。
逆に言えば、優れた伝統文化に頼りきって、抜本的な変革を怠ってきた訳で、日本で起きがちな問題だと思う。
現在の日本の空調環境は、石油ガス電気と熱源は多様化したが、部屋毎の個別空調のままで、洗面所で起きやすい事故も含め快適とは程遠い。
というわけで、西洋の暖房設備の変遷と、日本の空調設備を比べる事で浮かんだ発展過程の違いを考えて欲しい。
技術の進歩や時代の要請によって設備の現状は異なるが、同じ事がゴルフ界でも起きたのではないだろうか。
近代ゴルフの歴史は200年程だが、海岸沿いの郷土娯楽だったゴルフは、マッチプレーからストロークプレーになり、複数のティーを使うことでラウンドの連続性を失い、プロとアマの格差が広がり、接待や投機の対象にもなった。
この過程で失った情緒を取り戻す手立てはないのか?
ところで炭の話ばかりで恐縮だが、せっかく高度な伝統文化を持っているのだし、炭火を見直してはどうだろう。
鍋料理や炭焼き等、四人で食卓を囲むのにゴルフ場では見かけないのは何故だろう。
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