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月刊 ゴルフ場セミナー 2015年2月号 |
発行:ゴルフダイジェスト社 |
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連載コラム グローバル・アイ 第145回 |
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今回はバンカーについての小生の所見を書いておこう。
読者諸兄は芝草で覆われたコースの中にバンカーが点在する景色に、違和感を覚えた事はないだろうか?
自然界で砂が露出する状況は、海岸の砂浜と、急傾斜の斜面が崩れて砂地の地層が剥き出しになった場合だけだ。
ゴルフコースの場合、前者は渚バンカーとして具現化されているが、後者を上手くモデル化するのは難しい。
代りにクレーター状の凹みに砂を撒いたゴルフコース特有の砂場が横行している。
ここで、古いリンクスという意味からセント・アンドリュースのオールドコースを取り上げて、バンカーの成り立ちと発展過程を考えよう。
フッカーのトム・モリスが反時計回りの18ホールに直すまでは、時計回りの22ホールだった事はご存知だと思うが、当時からというか過去400年以上、バンカーの数は『ほぼ』不変で112個だ。
『ほぼ』と明記したのは理由があり、数個追加されたバンカーの成立過程が、そのままストラティジック(戦略)設計の基本概念だからだ。
アリスター・マッケンジーによると、プレーヤーの残したディボット跡が風雨によって成長し、思い余ったグリーンキーパーがバンカーに変えてしまったのだという。
言い換えれば、追加されたバンカーはプレーヤーのボールが集まりやすい場所にあり、必然的に当該バンカー、もしくはバンカー傍がベストポジションになるから、単純にバンカーを避けたルートが良いとは言えない。という構成こそが戦略設計の鍵なのだ。
いずれにしても、何も手を加えていないリンクスランドにバンカーの原型があったとすれば、マウンド(サンド・デューン)の斜面が崩れて砂地が露出した状態しかない。
ゴルフコースとして使う中で大きさや形状は変化するが、位置や周辺のアンジュレーションは殆ど変わらないから、古典的なコースはブラインドバンカーが残ってしまう。
よって英国では、ハザードは何処にあっても、たとえ見えなくてもアンフェアではない。と、考えるよう躾られる。
また、オールドコースでは全てのバンカーに愛称が付いているのも特徴的で、16番左のバンカーと呼ばずに『校長先生の鼻』だし、他にも『地獄』や『棺』等、的確にその場の状況が想像可能だ。
誰だって『〇〇会社の課長』と呼ばれるより、個人の人格を尊重して『△△さん』と呼ばれたいだろう。
これは画一的なバンカー配置や、似たデザインを避けるためにも良い方法だと思う。
そういえば、江戸時代の紳士達は大真面目にチョンマゲの手入れをしていたと思うが、現代では奇妙な髪型に感じるのと同じように、作為的なバンカーの形状は淘汰される運命にあるように思う。
ゴルフコースのバンカーは、摩天楼が林立する未来都市をデザインするのと訳が違うのだから、もっと自然の摂理を踏まえた形態にするべきだ。
ついでに言えば、人為的にデザインされたゴルフコース内の池は、H.S.コルトがサニングデールのニューコースで作ったものが最初だろう。
唐突に現れる直径20mほどのドブ池は、歴史的な価値を除けば、現代での存在意義が何処にあるのか解らない。
ところでルール上のハザードはバンカーとウォーターハザードだけだが、風や寒さや深いラフや樹木等も、立派にチャレンジングな障害物になり得る事はご存知だろう。
コース上の全てが響き合うようなゴルフ場が理想だ。
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