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月刊 ゴルフ場セミナー 2004年5月号 |
発行:ゴルフダイジェスト社 |
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連載コラム グローバル・アイ 第17回 |
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先輩と桜に誘われて、伊東にある中堅ゼネコンの研修施設に泊まり、翌日ゴルフをする会に出席した。
この催しは、そのゼネコンに仕事を発注した事のある建築設計家が、相互の情報交換と連携を深めるために十年前から続いているもので、ゼネコンの社長や他の設計家と親しく酒を酌み交わし、忌憚なき意見交換ができる数少ない
場として、参加メンバーからすこぶる評判がよい。
私自身は建築設計を止めてしまったが、翌日のゴルフと件の研修施設を設計した
先輩との関係で呼ばれたのだ。
ゴルフ界にいる読者にとって、建築界は近くて遠い存在かもしれないので、
ゴルフに関連がありそうな部分を大まかに説明しておこう。
先ずゼネコンだが、英語のゼネラルコンストラクションの略で、日本語では
巨大建設下請会社と訳すのが適切だ。
本来は施主の発注を受けて、建築家の設計図書に従い、工事全般を請け負って、
作業員の手配や資材調達、工程調節や工事管理を円滑に進めるのが仕事であった。
つまり、大工の棟梁と口入れ屋が合体したような組織で、海外には殆ど例がなく、
日本独特の企業形体である。
工事現場ではゼネコン本体は現場監督しか居らず、子受けや孫受けの工務店から
作業員を集めて作業を進め、工作機械や重機なども工事日程に合わせて専門商社
からレンタルする場合が多い。
一方設計図書を補う施工図の必然か、設計家の怠慢からか判らないが、独自の
設計部隊を持つようになり、豊富な資金力と総合的な大企業に憧れる若者を
集めて、いまや世界的にも評価されるほどの高い技術力を誇っている。
公共工事や大規模開発を発注する側から見れば、高い施工レベルと円滑な工事
管理、地元地権者とのネゴシエーションや責任所在の一本化などメリットは
大きいのだが、その分コストは跳ね上がり、対投資効果は施工技術の優位性を
凌駕していると指摘する人たちも多い。
ゴルフ場での土木工事には、海底トンネルの掘削や全長数100mの吊り橋敷設
ほどの高い技術力は必要ないから、今までとは全く違ったコスト構造が必要で、
もっと小回りの利く専門作業集団への期待が高まっている。
さらにゼネコンはその組織の特性上、ゴルフに特化した工作機器を保有しては
おらず(日本には殆ど輸入されてない)、機材操作に長けた作業員も数えるほど
しかいないから、補修工事を含むゴルフ場管理委託業務の可能性は大きい。
欧州の既存ゴルフ場では、グリーンキーパーが芝草管理の実務を担当し、アグロノ
ミストと呼ばれる芝を中心にした植物の専門家や、ランドスケーパーと呼ばれる
樹木の専門家、イリィゲーショニストと呼ばれる散水や排水の専門家が設計家と
チームを組んで、倶楽部やキーパーの要望を具現化する手段を考える。
其々が肥料や薬剤、環境問題、土壌改良などの最新の知識を持ち、コストに
見合った管理方法を提案するのだ。
日本では、そのようなシステムが根付いておらず、キーパーは全てを押し付け
られた挙句、良くて当然、周りに較べて劣っていれば怒られる。という図式に
陥っている。
設計家がキチンとした方法を提示できない所に、本当の問題があるのだろう。
さて建築の世界では、設計行為は大まかに分けると意匠、構造、設備の3つだが、
近年では内装設計も重要な要素になってきている。
ゴルフでも、既存ゴルフ場の管理や改修に特化した設計集団の登場が望まれる。
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