株式会社キャトルキャー ゴルフコース設計家 迫田耕(さこたこう)
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月刊 ゴルフ場セミナー 2004年6月号 発行:ゴルフダイジェスト社
連載コラム グローバル・アイ  第18回
 
コース内排水の原則
今回は懸案になっていたコース内排水の原則について考えてみたいと思う
最初は、ビーカーに土を入れ水を加えてかきまわした状態を想像して欲しい
しばらく放置しておくと、下から順に小石、砂泥が沈殿する事が分かると思う。
水に対しての其々の比重の違いが主な原因だが、自然界でも同様の事が起き、
大量の降雨後は地表面に泥が浮き出てくる
事を経験すると思う。
グリーンの床は、これに範をとり、泥の部分を削った構造であることは明白で、
自然の摂理に従った安定した状態を目指しているわけだ。

次に表面排水の問題だが、傾斜斜面刈高の芝があると仮定してみよう
早期に雨が芝土の上を流れ始めるのは、水分保持力の弱い刈高の低い方である。
さらに流れる速度が速いのも、表面抵抗の少ない刈高の低い方である事が想像
できる。
とすれば同じ傾斜で刈高の違った芝が隣接した場合判りやすく言うとフェア
ウエーとラフの境目では、フェアウエーの際に水が溜まったり、逆にドライに
なったりしやすい事が理解できると思う。
フェアウエーれてきた表面水速度く、ラフではいから、そこで
渋滞を起こし、境目のフェアウエー側に水が滞留するのだ。
逆にラフから流れてきた雨水は速度が遅いから、フェアウエーに出た途端に速度を
上げ、端にドライエリアを作る。
考えてみれば、芝土に滲こむ水分量は、水分がその芝土の上滞留している
時間と密接な関係があるから、先に述べた原則に基づいて刈高によってコント
ロールするする事が可能で、コース全体の刈高分布を少し変えれば、管理しやすく
なるはずだ。
コース内植生や傾斜による影響をまじめに受け止めて、自然摂理沿った
景観を作る努力は、芝草管理者に是非目指してもらいたい目標だ。

余談だが近年のマスターズのフェアウエーのラインは、醜悪の極みだと思う。
元々は自然地形を生かしセミラフのない設計だったのに、競技運営側の都合で
強引なラインを引き、美観を台無しにしている。
マスコミは基本的に見識が低く、誰が勝ったとか距離が伸びたとかグリーンが
速いだの硬いだの、頓珍漢で無責任な見解に終始するものだ。
グリーンキーパーはスタッフの中で唯一、自然と向き合っているという自覚を
持って、競技者や運営側とは別の見識を持ってもらいたい。

さて表面排水に戻り、グリーンの床の透水係数の事にも触れておこう。
近のUSGAのルートゾーンミックスでは、一時間当たり250oから350oの
透水係数が推奨されている。
これは、細粒砂と中粒砂を混合したルートゾーンでの、毛細管現象による水面
上昇が、ほぼ300oになる事から決定され、降雨量に対しても一見余裕が在りそうに
思える。
しかし、ルートゾーンの中で水が流れるのは、固相、液相、気相の中で気相の
部分だけであり、圧密が進んでいる場合、気相は15%を下回るだろうから、床土
だけを取ってみても毎時38oから53o以上の強い雨には耐えられない。
さらに、グリーン表面のサッチ部分は明らかに透水抵抗になるから現代の低刈り
とローラー掛けされたグリーンは、表面を流亡してしまう水分量が意外に多いのだ。
 つまり、水遣りも降雨量だけで判断せずに、毎時20oを超えるような強い雨は、
差っぴいて考えた方がよくスプリンクラを使う場合も毎時降雨量が15o以下
になるように調整して欲しい。